FDIC(米連邦預金保険公社)は、SVB(Silicon Valley Bank)及びSignatre Bankの破綻処理においてFDIC(破産管財人)の手元に残っていた債券の処理のために包括的顧問契約(Retention of Financial Advisor to Assist with the Liquidation of Securities)をBlackRock Financial Market Advisory(BlackRockの子会社)と締結したと公表した。(2023.04.05付けPress Release)
破綻処理においてFDIC(破産管財人)の手元に残された長期債券( securities portfolios kept in receivership )は、SVBが保有していた870億ドル及びSignatre Bankが保有していた270億ドルの計1,140億ドルである。
BlackRock(retainer)が当該長期債券を市場で売却することになるが、どのように処分するかはBlackRockは質問には無回答であるが、委託者FDICは市場への悪影響を最小限に抑えるため徐々に売却予定と説明している。
なお、破産管財人FDICの手元に一部債券が残された理由は、資産・負債の承継人がBridge Bankからの買い取りを拒否した部分と報道されている。
1.SVB Bridge Bank(シリコン・バレー銀行) から First Citizens Bank に移管された資産
3月10日(bridge bank設立時)残高 1670億ドル(簿価ベース)
3月27日(買収時点)残高 720億ドル(簿価ベース)注1
——————————————————————————————————–
差引(FDICの手元に残った債券残高) 900億ドル(簿価ベース)注2
注1:SVBは長期債券を満期保有目的(in held to manutiry)に分類していたためこれら債券は取得原価で貸借対照表に記載されていた。First Citizens Bank は承継するときに長期債券720億ドル(簿価ベース)を77%割引の165億ドルの割引価格(haircut)で購入している。
注2:FDICがSVBの総資産を SVB Bridge Bank を経由してFirst Citizens Bankに譲渡したときに、FDICの手元には900億ドルが残ったと報道されていたが、今回の報道では870億ドルとなっている。
FDICの手元に残った900億ドルの長期債券は、First Citizens Bankが77%割引(haircut)でも引き取らなかった残りの債券である。
2023.2.27には格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、各付け調査結果をSVBに連絡済みであることから、そのような客観的な格付け評価に基づきFirst Citizens Bankは引き取り拒否をしたのであろう。
引き取り拒否の債券は今後更に評価損が発生すると見込まれた債券と思われる。
2.今回包括的顧問契約で処理対象となった債券は次の3種である。
(1)Agency Mortgage Backed Securities
準政府系機関(Fannie Mae, Freddie Mac, and Ginnie Mae)が保証する不動産担保プール証券
(2)Collateralized Mortgage Obligations
住宅ローン担保証券
(3)Commercial Mortgage Backed Securities
担保は不動産に限定したノンリコースローン
今回売買の対象になる3種類の長期債券は全て動産担保証券であるため、ここ1年のFRBの政策金利の上昇により不動産市況が悪化した影響を受けて時価評価が急落したものである。今回の破綻処理で注意で参考になるのは、米国企業におけるモーゲージ担保証券の保有が今後の企業の財務内容にかなりの影響を及ぼすであろうということである。
シリコン・バレー銀行(Silicon Valley Bank)の破綻処理に係る投稿一覧
は次のとおりです。
シリコン・バレー銀行(Silicon Valley Bank)の破綻
「Silicon Valley Bank及びSignatre Bankの破綻処理に伴う債券売却」への1件のフィードバック
コメントは受け付けていません。