Silicon Valley Bankの破綻と銀行監督規制の動向

1.Silicon Valley Bank及びSignature Bankの破綻処理に係る公聴会
 SVBの破綻処理について米議会両院において公聴会が開催されました。
 
 2023.4.28(火)上院銀行委員会公聴会
 2023.4.29(水)下院金融サービス委員会公聴会

証言者 
 FRB(連邦準備制度理事会)監督担当副議長マイケル・バー、
 FDIC(連邦預金保険公社)議長のマーティン・グルエンバーグ、
 財務省 国内政策担当秘書 ネリー・リャン
 連邦準備銀行次官

 議会証言の論点
 FRB(米連邦準備制度理事会)が破綻した銀行を適切に検査・監督していたか
  注:検査・監督を実際に行うのは地元を管轄する地方の連銀
 警告を受けににもかかわらず何故破綻銀行は対処できなかったのか

 共和党の委員は2018年規制を擁護した上で、今回のSVBに対するFRBの監督の役割、対処の遅れ、責任の所在に焦点をあてて質問をした。
 民主党の委員はトランプ政権時代に銀行の規制緩和(2018年のドッド・フランク・ルール)のロールバックを狙って将来の破綻を防ぐための銀行監督の規制強化の必要性を強調する質問をした。

2.今後の規制当局の対処
  FRB:Silicon Valley Bank及びSignature Bankの破綻に至る調査の内部報告書を5 月 1 日までに発表し、銀行の監督体制を見直す予定。
  FDIC:2つの銀行の経営に対する調査を開始
  証券取引委員会:破綻の直前と直後に発生したパニックで、銀行の幹部や株主が意図的に大衆を惑わしたか否かを調査
  連邦刑事検察官:破綻した銀行の役員の株式譲渡を調査

3.今後の議会による法改正の動き
 共和党と民主党が共同で、FRBと消費者金融保護局に独立した調査官を設立する法案を準備

 民主党は、トランプ政権時代に行われた銀行監督の規制緩和(2018年のドッド・フランク・ルールを緩和し資産規模から中小銀行を監督対象から除外した超党派で成立した法律)について見直しを行い、一部は元の規制に戻す法案を準備。
 FRBが1,000億~2,500億ドルの資産を保有する規模の銀行には強力なリスク対応を検査項目とする法案を準備。
 
 注:2018年のドッド・フランク・ルールは規制緩和前には年間平均500億ドル以上の資産規模の銀行が監督対象であったが、トランプ時代の規制緩和により総資産が継続して平均1000億ドルを超える規模になると始めてFRBの監督対象となるよう改正された。
 ただし、改正後の原稿規制法においても、FRBの裁量で1,000億~2,500億ドルの資産範囲の銀行でも監督対象とすることができる制度が残されていた。
 トランプ大統領が指名したFRBの監督担当の副議長Randal K. Quarlesは、規制緩和の影響で2018年に急成長したSVBについては監督不要を決定した経緯がある。
 2018年法ではFRBにストレス・テスト権限を付与していたが、規制緩和後はFRBは法律によらず連銀の独自規制としてFRBの裁量で行われるようになった。今回、サンフランシスコ連銀はSVBの監督を行おうとしたがFRBに止められたためストレステストが行われなかったとの報道もある。
  
 サンダース上院議員 (I-VT) は、銀行幹部が銀行を規制するFRBの理事会に参加することを禁止する条項、FRBの従業員と理事会メンバーが株式を所有したり、FRBが規制を担当している機関への投資の禁止条項を盛り込んだ法案を提案している。

4.バイデン大統領の提案
 1.銀行が誤った管理と過度のリスクテイクで破綻した場合はFDICが破綻した銀行の役員から報酬を回収
 2.破綻した銀行の役員への損害賠償請求
 3.破綻した銀行の役員が他の金融機関への就職禁止
 4.総資産1,000億~2,500億ドルの資産規模の銀行の監視を強化

5.地方の小規模銀行からの預金流出
 SVB破綻から数日で、米国の25の大手銀行が1,200 億ドルの預金を獲得したのに対して、中小の銀行からは 1,080 億ドルの預金流出あった。1週間での小規模銀行からの預金流出規模は週間単位での減少としては過去最大のものであった。
 Refinitiv Lipper のファンド・データによると、SVB破綻から 2 週間で 2200 億ドル以上の資金が証券会社のMMF口座に流入した。
 
 多くの中小銀行は預金者の預金引き出しに対応するために、最後の貸し手であるFRBから資金調達を行った。
 FRBは2つの緊急融資制度を創設した。
 Bank Term Funding Program
  (Federal Reserve Act 13条(3)による1年間の融資制度)
 New Emergency Liquidity Backstop(3月12日創設) 
  国債等を額面評価で担保にとって行う銀行支援融資

 SVBが破綻した週だけでFRBの2つの支援融資制度を利用して米国内の銀行が資金調達した総額は1650億ドルであったが、2008年の金融危機の際の融資総額が1120億ドルであったから、今回の影響が如何に大きかったかということが分かる。

シリコン・バレー銀行(Silicon Valley Bank)の破綻処理に係る投稿一覧
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