相続開始前7年以内の贈与の相続財産加算(令和5年度改正法)

令和5年度税制改正で相続税法第19条第①項が改正され、生前贈与加算の加算期間の延長が行われました。

1.改正前の相続税法第19条第①項
 相続開始前「3年以内」に被相続人からの贈与によって財産(加算対象贈与財産)を取得した場合には、加算対象贈与財産を相続財産に加算した額を相続税の課税価格とみなす規定となっていました。

2.改正法第19条第①項の改正内容及び経過措置
(1)加算期間の延長
 改正法では、令和6年1月1日以後の贈与においては相続財産に加算する期間が相続開始前の「3年以内」から「7年以内」に延長されました。
 次の新旧対照表をご参照ください。

改正相続税法19条1項、相続開始前7年以贈与贈与加算

(2)加算期間の延長した期間(4年間)に受けた加算対象贈与財産から100万控除 
 延長した加算期間に受けた贈与については、加算対象贈与財産の合計額から100万円を控除した残額を相続税の課税価格に加算します。(改正法第19条第①項の括弧書きの規定。)
 加算期間の延長は経過措置で段階的に行われ、経過措置が終了すると延長期間は4年間になります。100万控除は延長期間に対応して受けた贈与加算対象財産から控除することになります。
 
(3)激変緩和の経過措置は附則で対応
 改正相続税法第19条第①項は、令和6年1月1日から適用されます。(附則第1条第8号)
 
 但し、令和6年1月1日から令和12年12月31日までの間に開始する相続においては3年以内加算から7年以内加算への激変緩和の経過措置が附則第19条において規定さています。

3.激変緩和措置の附則第19条の条文構成
 加算期間が延長された7年間の間に開始する相続については、経過措置が附則第19条に規定されています。
(1)令和6年1月1日~令和8年12月31日の間に開始する相続への措置
  生前贈与の加算期間は3年とする。(附則第19条第②項)

  改正本則19条①項の加算期間「7年」を「3年」とする読み替え規定により「相続開始前3年以内」の加算期間が適用されます。

(2)令和9年1月1日~令和12年12月31日の間に開始する相続への措置
  生前贈与の加算は段階的に7年とする。(附則第19条第③項)
  
  令和9年1月1日~令和12年12月1日の間に開始する相続については、附則19条で加算期間の起算日を令和6年1月1日に固定しました。
 加算期間の計算は、法19条の本則では相続開始の日から遡及して応答日までの期間計算をする規定です。
 経過措置における加算期間の計算は、起算日を令和6年1月1日に固定して相続開始日(終期)までの期間計算をするように規定されているので、相続開始日(終期)が後になるに従って加算対象期間が順次長くなる措置が講じられています。

 経過措置の期間計算の複雑さの原因は、遡及計算と令6.1.1を起算日とする二つの計算方法が混在することにあります。
 もともと本則法19条1項は相続開始の日からの遡及して贈与の加算期間の計算をする規定になっていますが、この期間計算が経過措置においても生きています。
 附則の経過措置の規定では加算の起算日を令6.1.1に固定して将来に向かって相続開始の日までの贈与の加算期間の全体の期間計算(A)をします。
 次に、延長加算期間の加算対象贈与財産から100万を控除(上記2(2))する計算では、相続開始の日から遡及計算で3年目の応答日(B)を出します。3年目応答日を超えた日から令6.1.1まで遡及した延長期間C(A-B)を計算します。このCの延長期間に受けた贈与から100万円を控除することになります。

4.経過措置の期間における加算計算
 経過措置の期間内に開始した相続に係る加算対象贈与財産の計算の関係は図のようになります。

相続開始前7年以内の贈与の相続財産加算の経過措置
 経過措置の期間が終わり改正法が完全実施されるは、令和13年1月1日以後に開始する相続からです。
 相続開始前7年以内(改正前:3年以内)の加算対象贈与財産の加算規定が適用され、相続の開始の日から遡及して7年目の応答日から当該相続の開始の日までの期間(相続税法基本通達19-2)に受けた加算対象贈与財産を相続財産に加算することになります。

5.改正相続税法 附則第19条(相続税法の一部改正に伴う経過措置)
 第4条の規定による改正後の相続税法(以下「新相続税法」という。)第19条第1項、第21条の15第1項及び第2項並びに第21条の16第2項及び第3項の規定は、令和6年1月1日以後に贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により取得する財産に係る相続税について適用し、同日前に贈与により取得した財産に係る相続税については、なお従前の例による。

2項 令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与及び当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続税法第21条の9第3項の規定の適用を受けるものに係る贈与を含む。以下この条において同じ。)により財産を取得する者については、前項の規定にかかわらず、新相続税法第19条第1項の規定を適用する。この場合において、同項中「7年」とあるのは、「3年」とする。

3項 令和9年1月1日から令和12年12月31日までの間に相続又は遺贈により財産を取得する者に係る新相続税法第19条第1項の規定の適用については、同項中「当該相続の開始前7年以内」とあるのは、「令和6年1月1日から当該相続の開始の日までの間」とする。

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