コロナ持続化給付金詐欺(搾取)事件

2022年5月末にコロナ持続化給付金約9億円の詐欺(搾取)事件(主犯格はインドネシア逃亡と報道)が報道された直後に、6月2日から国税局職員が関与した持続化給付金合計約2億円詐欺(搾取)事件(主犯格はドバイ逃亡と報道)が日刊各紙に報道されています。
合計約2億円の事件には、現役税務署職員と元税務職員が関与しているとのことだったので、公表されている過去の東京国税局職員名簿(各年の税務研究会編)に当たってみました。
過去に、コロナ持続化給付金搾取に税務署職員がかかわった事件報道が2021年に山梨県甲府でもありました。

1.今回の2億円詐欺(搾取)事件に関わったと報道されている職員(元を含む)
(1)塚本晃平(税務職員名簿から)
2017年3月 高校卒業? 朝日新聞報道では専門学校    18歳
2017年4月採用~2018年3月 税務大学校普通科(研修期間1年)
2018年4月配属~2021年6月 藤沢税務署・徴収第1部門  20歳
2021年7月~2022年現在   鶴見税務署・徴収部門    24歳
注:鶴見税務署

(2)中村上総(税務職員名簿から)
2017年3月 高校卒業? 朝日新聞報道では専門学校  18歳
2017年4月採用~2018年3月 税務大学校普通科(研修期間1年)
2018年4月配属~2019年6月 緑税務署・法人課税第2部門 20歳
(源泉所得税担当)
注:中村は税務署配属後わずか1年で早期退職していました。

2.2021年5月の山梨県甲府市の事件でかかわった元税務職員
当時の新聞報道によると、こちらは搾取金額400万円で、2021年5月6日に名古屋地方裁判所一宮支部で判決確定です。
藤山雄太(甲府税務署勤務)が持続化給付金申請者の一覧表を作成しており、確定申告書の偽造500~600件で、報酬を得ていたとのこと。
山梨県甲府市の税務職員の事件の管轄が名古屋地裁一宮支部だったということは、立件された支援給付金の搾取事件が愛知県一宮市だったのだろうと思います。

藤山雄太(税務職員名簿から)
2016年3月 大学卒業でしょう       22歳
2016年4月採用 税務大学校(国税専門官)3ヶ月研修
2016年6月 板橋税務署・管理運営部門
2017年~2018年 板橋税務署・資産課税第2部門
2019年6月~ 杉並税務署・資産課税第3部門
2020年6月~ 甲府税務署・資産課税第2部門 26歳

立件された事件は2020年6月の詐欺事件だそうですが、時系列的いは藤井は山梨県甲府税務署に赴任した直後に事件を起こしたことになります。
2021年3月懲戒免職
2021年5月判決公判言い渡し      27歳

3.今回の2億円事件と2020年の甲府市の事件の共通性
(1)コロナ支援給付金制度(中小企業庁)
当時の個人事業主のコロナ持続化給付金の申請要件は次のとおりでした。
2020年5月から2020年12月までの聞で、新型コロナウイルス感染症の影響など
により、以下のいずれかにあてはまること。
① いずれか1か月の売上が前年の同じ月と比較して50%以上減っている場合
② 連続する3か月の売上の合計が前年の同じ期間の売上の合計と比較して30%以
上減っている場合

持続化給付金のガイドライン(中小企業庁作成)は事業収入の判定につかう収入は所得税法第2条を引用していました。
給付金申請の前年の2019年の事業収入は、確定申告書(所得税法第2条第1項37号に規定する確定申告書を)第一表における収入金額等の事業欄記載の額で立証する必要があります。そのためには、確定申告書の(控え)の写しが給付金申請の添付書類でしたから、申告書の(控え)が絶対に必要な書類でした。

給付金の申請年の2020年収入については、現在進行形で確定していないから、自分で作成した売上げ表などで減少を立証していました。

(2)虚偽の過去の申告書
虚偽で給付金申請した者等は、そもそも事業など行っていないのですから、確定申告などしておらず、申告書(控え)は持っていませんでした。
詐欺者らは給付金申請の添付資料のために、過去に事業(あるいは請負を雑所得で処理したように見せかけたかも知れない)を行っていたなどと、虚偽の確定申告をしたのですが、それを手伝ったのが事件に関わったと報道されている税務署職員ということです。

中小企業庁の申請規定では、コロナ持続化給付金の収入減の判定は、収入ベースで対前年比50%減(連続3ヶ月30%減)行うことになっていたので、所得ベース(収入ー必要経費=所得)は全く無関係だったのです。
もし、虚偽申告を過去に遡ってプラスの所得で申告をすると過去に遡って納税額が発生し税金の滞納問題が起きます。その場合は、滞納だけではなく無申告加算税や延滞税などの問題が起きますが、虚偽申告をマイナス所得でやれば、納税額の滞納も出ず、また、罰則的な付加課税(無申告加算税、延滞税)も発生することがないので、平気でマイナスの虚偽申告をしたのでしょう。この辺りが税務知識の悪用と報道される所以です。

(3)個人所得税の確定申告は紙ベースの申告書で住所地所轄の税務署に提出したのだろと思います。
もし電子申告でやるとなると、電子認証手続きとか面倒な手続きが必要になるから、紙ベースで提出して税務署の受付印の押印を貰ったのでしょう。また、郵送で提出すると(控え)の返信郵便物が戻ってくる住所地が問題になるので、詐欺グループだけで完結するために税務署に出向いて紙の申告書(控え)に受付印を貰ったのだろうと思います。
詐欺グループの一人が各地の税務署に出向き受け付け窓口で確定申告書の紙の書類を提出した筈ですが、提出のときに、もし、提出者の本人確認を求められたときには、代理で持参したとでも言い訳をしたのでしょう。数をこなす詐欺は組織的でないとできない犯罪です。

(4)一方、コロナ持続化給付金申請は電子でやった筈です。
税務署から貰った受付印のある紙の(控え)書類をスキャナにかけてPDF化し電子添付したのでしょう。

ちょと気になったのが、3人の税務職員に共通する勤務地が東京の中心部ではなかったことです。
コロナ持続化給付金の受け取りは受給者の所得を構成するので、捜査で実体が解明されたら、刑事事件とは別に課税問題も出てきます。

以上、新聞報道から今回の犯罪手口をこうではなかったのかと法令に照らして予測をしてみただけなので、事実に基づく話ではないことをお断りしておきます。

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