電子取引情報の保存すべき時期(データのダウンロードの時期と保存)

1.電子取引データの記録保存の開始時点

 電子取引(所得税・法人税に係る電子取引)を行った場合は、その取引情報は電磁的記録の形で保存する義務が生じます。領収書等の電子データも全て電磁的記録で保存することになります。(電帳法第7条;下記4ご参照)
 この電磁的記録を「いつの時点」から保存するのかについて、電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)問39では「データを確認できることとなった時点」から保存する義務があるとの解釈を示しています。
 この解釈は、民法の到達主義の原則の適用と言えます。

2.民法の到着主義の適用

 電帳法7条を受けて電帳法施行規則第4条第1項では次のように規定しています。
「 法第7条に規定する保存義務者は、電子取引を行った場合には、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を、当該取引情報の受領が書面により行われたとした場合に、~ 当該書面を保存すべきこととなる場所に、~ 保存しなければならない。 」
 
 規則4条1項の規定振りは、電子取引情報の授受と通常の書面取引情報の授受とを同じに取り扱う規定となっています。
 書面授受の場合は、民法97条の遠隔地の意思表示の到達主義の原則が適用されます。受取人が書面を受け取った時に相手の意思表示が到着したことになります。(民法97条;下記4ご参照)。
 
 規則4条から、電子取引情報の授受には到達主義が適用されるるので、PDFなどの電子データが受信者のPCやサーバーなどに着信したときが到達した時ですから、その時点からの受信側の保存義務が適用されます。

3.電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)問39が示す解釈

電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)問39

 電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)問39の【回答】では、到達主義の適用とデータ保存については、次のように説明しています。
 
(1)到着主義の適用の説明振り 問39の【回答】の【解説】
「 領収書等データがインターネット上で確認できる状態となった場合についても、郵送された書面が自身の郵便受けに投函された状態と同視できることから、その時点で電子取引が行われており、そのタイミングで保存すべきと考えられます。」
 【解説】の説明では「郵便受け」を例にとって説明しています。
 電子通知の場合にはpull型とpush型がありますが、push型の場合はデータ本体が着信するので直ぐに分かるのですが、PULL型の場合はデータ本体はサーバーの受信ボックスに保管されます。
 PULL型の場合は、データを送信した旨のメール着信があり、受信側がサーバーの受信ボックスにデータを確認し受信ボックスからダウンロードできる状態になったところが、回答の例示でいう「郵便受けに投函された状態」ということになるのでしょう。
 
 税金の確定申告を電子申告(e-TAX)で行う場合の電子送信についても到着主義が適用されます。
 e-TAXによる電子送信データが国税庁のサーバーに申告期限当日の真夜中の24:00に到着しない場合、仮に1秒でも遅延があると、期限後申告となってしまいますから注意が必要です。
 確定申告書等を郵便信書で送る場合は、国税通則法第22条(郵送等に係る納税申告書等の提出時期)の規定により発信主義で郵便信書の消印日付で申告が行われたものと見なされますが、これは法令に基づく例外的取扱いです。
 電子申告(e-TAX)については、このような規定がないため、民法の原則の到達主義の原則が適用されます。

(2)保存とダウンロードの関係
 電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)問39の【回答】では着信したデータのダウンロードについて、次のような説明があります。

 「データを確認できることとなった時点が電子取引の授受があったタイミングだと考えられます。領収書等データが提供されている以上、ダウンロードしなければ保存義務が生じないというものではありません。」

 サーバーにデータ保存があれば、「ダウンロードしなければ保存義務が生じないというものではありません。」との解釈が示され、サーバー上の保存も保存の一形態との解釈を示しています。
 ところが、インターネット上のデータは紙と違って突然に消えて、ネット上で閲覧できない、あるいは、タウンロードできない恐れもあります。調査で求められたときに閲覧・ダウンロードができなければ保存義務違反となってしまう恐れもあります。
 ネット上のサーバーの受信ボックスが送信者側のサーバーであればなおさら7年間の保存期間には注意を払って、ダウンロードできるときにダウンロードしておかないと後で問題になることも予想されそうです。

4.根拠法令
電帳法第7条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない

民法第97条(意思表示の効力発生時期等)
 第1項  意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる

国税通則法第22条 (郵送等に係る納税申告書等の提出時期)
 納税申告書(当該申告書に添付すべき書類その他当該申告書の提出に関連して提出するものとされている書類を含む。) その他国税庁長官が定める書類が郵便又は信書便により提出された場合には、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日(その表示がないとき、又はその表示が明瞭でないときは、その郵便物又は信書便物について通常要する送付日数を基準とした場合にその日に相当するものと認められる日) にその提出がされたものとみなす。

 

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