仕入税額控除

(1)消費税法30条1項 【課税仕入に係る消費税額】
ア 東京地裁(平9.8.8判決)平8(行ウ)34号
 借家権消滅の対価として支払われる立退き料は、「単に権利等の資産が消滅する場合には、当該資産を有する者のもとで発生した付加価値が移転すると観念することはできないので、」「借家権を消滅させる行為が課税仕入に該当せず」控除対象仕入れ税額とならない。
 本判例は、仕入税額控除について解釈しています。
  月刊「税理」Vol.41 No.5
  判例タイムズNo.977(1998.9.15)

イ 神戸地裁平成24年3月29日判決(平23(行ウ)35号)確定
 「課税仕入れを行った日」(消費税法30条1項1号)とは,土地・建物については,引渡しがあった日とみるべきであり,土地に関しては,代金の支払いが完了し,かつ,所有権の移転登記の申請をした時点や建物に関しては,鍵の引渡し等が行われ,買主において使用収益が可能となった時点など,当該契約や取引の内容に応じて,引渡しの日として合理的であると認める日と解するのが相当である。
 本件建物については,法律上も事実上も, 平成19年9月28日には,その占有が売主から原告に移転し,使用収益が可能となったものであり,同日に本件建物の引渡しがあったのであるから,本件建物の課税仕入れは平成19年10月1日から始まる課税期間の課税仕入れに当たるということはできず,本件付建物の取得につき,消費税法30条3項1号を適用して仕入れに係る税額を控除することはできない。
  月刊「税理」平成25年7月号付録・租税判例の回顧平成24年上半期 

ウ 名古屋地裁平成24年10月25日判決(平23(行ウ)135号)控訴
 強制競売手続きで取得した分譲マンションに係る前区分所有者の滞納管理費については、本件マンションの代金として支払われたものでないから、本件管理組合に対して支払われた滞納管理等は「資産の譲受け」の対価ではなく、本件管理組合が行う「役務の提供」の対価として支払われたものでもない。
 従って、本件滞納管理費等は、消費税法30条1項所定の「課税仕入れに係る支払対価」には該当しない。
  月刊「税理」平成25年12月号付録・租税判例の回顧平成24年下半期 

 名古屋高裁平成25年3月28日判決(平24(行コ)60号)
  区分所有建物管理費等については,その大部分が消費税の課税対象となっていないことは控訴人の自認するところであり,ただ,上下水道料金については,区分所有者がその専有部分で使用したものであっても,管理組合規約等によって管理費等として扱うことが定められている場合には,例外的に消費税が含まれていることがあり得るが,これの管理費等全体に占める割合は極めて小さいと推測される。そうすると,前所有者の滞納管理費等は,基本的に不課税であるといえるので,本件において、控訴人が本件各管理組合に支払った本件各滞納管理費等を「課税仕入れに係る支払対価」とみることはできない。
  月刊「税理」平成26年7月号付録・租税判例の回顧平成25年上半期 

 最高裁平成26年4月22日判決(平25(行ツ)269号、平25(行ヒ)274号)
  上告申立て不受理
 原告は,本件調査事業年度の帳簿及び請求書等について,消費税法62条に基づく本件調査の担当職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかったというベきであるから,消費税法30条7項に該当し, 同項ただし書きにいう「やむを得ない事情」も認められない。
    租税判例の回顧平成26年上半期 月刊「税理」平成27年7月号付録

エ 大阪地裁平成27年6月11日判決(平24(行ウ)233)
 原告が信託受益権を売却後に、信託契約を解除して、原告が信託受託者から本件土地建物の所有権を取得することに伴い賃貸人の地位は原告に移転するので、収益は原告に帰属する。
 本件コンサルティング契約における調査?監修業務全体に係る対価として総額を定めたものであって,当該業務の進捗状況や出来高とは無関係に,契約締結後,早期に報酬総額のおおむね3分の2に相当する金額を支払い,残余を業務完了時に支払うことを定めたものと解されるから,原告が本件コンサルティング契約に基づく役務の全部の提供を受ける日である本件コンサルティング契約の終了日(当該課税期間以降の日)をもって課税仕入れを行ったとするのが相当である。
  月刊「税理」平成28年7月号付録・租税判例の回顧平成27年上半期 

オ 長崎地裁平成27年10月5日(平25(行ウ)11号)
 地方税法上、固定資産税等は、1月1日を基準として年ごとに課税されるものであって,所有期間に対応して課税されるものではない。また,固定資産税等の課税関係は,地方税法の規定によって定まるのであって,私人間の合意のみによって固定資産税等の課税関係や納税義務が変更されることはない。
 本件清算金(注:日割り固定資産税)は、実質的には、本件売買契約に基づく本件不動産の購入の代価の一部を成すものと解するのが相当であるから、これを本件不動産の取得価額に算入すべきであり、販売費ないし一般管理費として「損金」に算入することはできない。
 本件清算金のうち本件建物に係る分は、実質的には「課税仕入れに係る支払対価」の一部を成すものと解するのが相当である。
  月刊「税理」平成29年1月号付録・租税判例の回顧平成27年下半期 

カ 那覇地裁平成31年1月18日判決(平成25年(行ウ)19号,平27(行ウ)24号)
 区分所有者(原告)が賃借人Aに共同管理費の負担を求めたことは、原告が負っていた共同管理費の負担を実質的に免れるという経済的効果を受けることになる。これは原告が得る「対価」(消費税法2条1項8号)に該当する。
 本件共同管理費は,一般的な共用部分の管理費と同様に,本件管理組合がいかなる管理業務を行い,各区分所有者がそこからどの程度受益したかということとは無関係に,単に区分所有者たる地位に基づいて支払義務が発生する性質のものにとどまるというべきであり,本件管理組合が行う管理業務と対応関係を有するとはいえず,管理業務という役務の提供に対する対価であるとは認められない。
以上によれば,本件共同管理費の支払は「課税仕入れに係る支払対価」(消費税法30条1項)には当たらず,仕入税額控除の対象とはならない。
  月刊「税理」令和2年7月号付録・租税判例の回顧平成31年・令和元年上半期 

 福岡高裁那覇支部 令和2年2月25日判決(平成31年(行コ)1号)上告
  控訴棄却
  月刊「税理」令和3年10月号付録・租税判例の回顧令和2年上半期 

キ 東京地裁平成31年2月20日判決(平成27年(行ウ)583号)
 原告Xは、香港の小売事業者からの委託を受けて、日本国内の卸売り業者A(仕入れ先)など5社から日本国内の商品の買い付けを行う取引を行っていた。
 原告Xと日本の卸売り業者Aとの間には売買基本契約が締結された外形的根拠がなかった。香港の小売業者と日本の卸売り業者Aとの間には売買基本契約は締結されていた。原告Xは商品の内容や数量の決定には関与した事実は認められなかった。
 原告Xがその支払に関与しない場合もある上,関与する場合であっても,本件各国内事業者に商品代金を支払った後,その支払會から消費税等相当額を控除し手数料を加算した金額を香港等事業者に請求するというものであり,商品代金額の決定自体に原告Xの意思が介在するものではなく,その実質は立替払であるといえる。
 こうしたことからすれば,原告Xは,本件各取引において売買契約の当事者として関与していたとは言い難ぐ本件各国内事業者(A)と香港等事業者との間の売買契約において,商品の引渡しや代金の支払といった事実行為に関与していたにとどまるものというべきである。
 したがって,本件各取引の外形面,実質面のいずれからみても,原告Xと本件各国内事業者との間に売買契約があったと認めることはできず,原告Xが本件各取引により資産を譲り受けた事業者であるとして,本件各取引が原告Xが行った課税仕入れであるということはできない。
  月刊「税理」令和2年7月号付録・租税判例の回顧平成31年・令和元年上半期 

 東京高裁令和元年11月6日判決(平成31年(行コ)96号)確定
  控訴棄却
  月刊「税理」令和3年1月号附録・租税判例の回顧令和元年下半期 

ク 東京地裁平成31年3月14日判決(平成29年(行ウ)142号)控訴
 したがって,課税資産の譲渡等による対価を収受する権利が確定した時点で,課
税資産の譲渡があったとみるのが相当であり,同法30条1項1号にいう「課税仕入れを行つた日」についても,課税資産の譲渡等による対価を収受する権利が確定した日をいうものと解するのが相当である(この意味で,消費税においても,いわゆる権利確定主義が妥当する。)。
 課税資産の譲渡等による対価を収受する権利が確定したというためには,権利が発生したというだけでは足りず,客観的にみて権利の実現が可能な状態になったことを要するというべきである。消費税法基本通達9-1-13 (以下「本件通達」という。)は,消費税法30条1項1号にいう「課税仕入れを行つた日」の趣旨を確認的に定めたものにすぎないものであって,本件通達ただし書も,権利確定主義に反する取扱いを認めるものではなく,契約において姜の効力発生日を当該資産の譲渡の日と定めている場合に,当該契約の効力発生日をもって権利確定したと認められる事情があるときは,その日を「課税仕入れを行つた日」とすることも同号に反しない旨を確認する趣旨のものにすぎないと解される。
B司法書士による事務の履行は,消費税法2条1項12号にいう「役務の提供」に当たる。前記のとおり,消費税法30条1項1号にいう「課税仕入れを行った日」とは,課税資産の譲渡等による対価を収受する権利が確定した時点をいうものと解され,本件司法書士報酬につい
ては, 当該報酬の請求権の確定した日が「課税仕入れを行った日」となるというべきである
 本件司法書士報酬に係る請求権が客観的にみて実現可能な状態となった時点,すなわち権利の確定の時点は,上記の各登記申請という委任事務の履行が完了した日である平成25年12月2日と認めるのが相当である。したがって,本件司法書士報酬に係る「課税仕入れを行った日」は,本件課税期間に属さない日であることとなる。
  月刊「税理」令和2年7月号付録・租税判例の回顧平成31年・令和元年上半期 

 東京高裁令和元年12月4日判決(平成31年(行コ)106号)上告
  控訴棄却
  月刊「税理」令和3年1月号付録・租税判例の回顧令和元年下半期 

ケ 東京地裁平成31年3月15日判決(平成29年(行ウ)143号)控訴
 消費税法上,「当該課税仕入れを行った日」についての明確な定めはないものの,同法30条1項1号及び2条1項12号の各規定のとおり,課税仕入れとは,当該資産の譲渡等をした者から見た場合に,それが事業として行われれば課税資産の譲渡等に該当するものに限られていることからすると,課税仕入れと課税資産の譲渡等は表裏の関係にあり,課税仕入れの時期は課税資産の譲渡等の時期に準じて判断するのが相当である。ところで,課税資産の譲渡等の時期についても,消費税法には明確な定めはないものの、国内において事業者が行った資産の譲渡等については,、当該資産の譲渡等そのものが消費税課税の対象とされていること(同法4条1項),課税資産の譲渡等をした時が消費税を納付する義務の成立時期とされていること(通則法15条2項7号)からすれば,課税資産の譲渡等の時期とは,当該課税資産の譲渡等が現実に行われた時,すなわち,資産の譲渡においては,原則として,当該資産に係る権利(所有権)が移転した時をいうものと解するのが相当である。
 原告は,本件通達ただし書(11-3-1,9-1-13)に基づいて,本件建物の売買契約の効力発生の日(締結日)を「課税仕入れを行った日」として本件確定申告をしているところ,同ただし書は,事業者の選択により,売買等の契約の効力発生の日を「課税仕入れを行った日」とすることを当然に認めているわけではなく,事業者が,譲渡に係る契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているとき,すなわち,契約において資産に係る権利(所有権)の移転の時期を定めているときは,その日を「課税仕入れを行った日」とすることを認めるものであると解される。本件では,本件建物の売買契約の効力発生の日(締結日)をもって所有権を移転する旨の合意があるとは認められず,結局,原告が本件建物の売買契約の効力発生の日(締結日)を「課税仕入れを行つた日」として本件確定申告をしているのは,消費税法基本通達の解釈.適用,ひいては消費税法の解釈.適用を誤ったことにほかならないというべきである。
  月刊「税理」令和2年7月号付録・租税判例の回顧平成31年・令和元年上半期 

 東京高裁令和元年9月26日判決(平成31年(行コ)90)上告
  控訴棄却
  月刊「税理」令和3年1月号付録・租税判例の回顧令和元年下半期 

コ 東京地裁平成31年3月15日判決(平成29年(行ウ)144号)控訴
 消費税法30条1項1号にいう「課税仕入れを行った日」は,事業者が事業として他の者から資産を譲り受けた場合における当該課税資産の譲渡等がされた時をいうものであり,それは,譲渡人の下で生じた付加価値が譲受人に移転することが確定した時と解するのが相当であって,具体的には,消費税の課税の対象である付加価値の移転の原因となる課税資産の譲渡等が,例えば,代金の支払,資産の引渡し等によって外部に認識されるに至った状態,すなわち,課税資産の譲渡等に係る権利又は債務が確定するに至った状態が生じた日を指すものと解するのが相当である
 本件の事実関係の下においては,本件売買契約における本件不動産の現実の支配が移転した日は,平成25年5月30日であって,本建物の取得に係る権利又は債務が確定するに至った状態が生じた日,すなわち,本件建物を取得したことに係る「課税仕入れを行った日」も,平成25年5月30日であると認めるのが相当であって,本件売買契約が締結された日である平成25年4月25日の時点においては,本件売買契約の解除権が当事者の双方に留保されている状態であることや,本件売買契約に基づく債権債務が履行されたのが,全て同年5月30日であることを踏まえると,本件売買契約が締結された日である同年4月25日に,本件建物の取得に係る権利又は債務が確定す
るに至った状態が生じていたものとは認め難い。
 参考:原告株式会社の本件課税期間は平成25年4月24日~4月30日
  月刊「税理」令和2年7月号付録・租税判例の回顧平成31年・令和元年上半期 

 東京高裁令和元年9月26日判決(平成31年(行コ)96号)上告申立て
  控訴棄却
   月刊「税理」令和3年1月号付録・租税判例の回顧令和元年下半期 

サ 東京地裁令和元年11月21日判決(平成29年(行ウ)179号)
 原告は,本件調査担当が平成26年2月4日に本件調査に着手してから平成27年5月までの約1年4か月もの長期間にわたり,本件調査への対応を拒み続けたものである。その間,本件調査担当者は合計7回にわたり原告事務センターに臨場したが,事前通知なく実施した初回の臨場を除けば,いずれも事前に実施日を予告する連絡票を送付しており,これらの連絡票には,調査の目的が法人税及び消費税等の申告内容の確認であることや,調査の対象となる課税期間や提示すべき帳簿等が明確に示されていた。また,本件調査担当者は,原告代表者が海外出張中であるなど合理的な理由が示された場合は,実施日を変更するなどして対処していたものであり,そのほかの場合は,税務代理人であったC税理士が数か月先まで業務が多忙であるなどと主張するのみで,当該実施日に対応が困難であるとする具体的な理由を示さず,代替日程の候補も提示しなかったため,予告した日のとおりに臨場を実施したものである。なおC税理士は,本傾査担当者の原告事務センターへの臨場時に少なくとも3回は同センターで応対していることに照らせば、同税理士の立会いの下に短時間の調査を実施すること可能であったといえる。
 以上によれば,本件調査担当者による長期間にわたる帳簿等の提示の求めに対し,原告において,これに応じ難いとする合理的理由はなかったにもかかわらず,帳簿等の提示を拒み続けたものと認めるほかない。そうすると,原告が税務職員による帳簿等の検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していたということはできず,本件は法30条7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に当たるというべきである。
  月刊「税理」令和3年1月号付録・租税判例の回顧令和元年下半期 

 東京高裁令和2年8月26日判決(平成元年(行コ)325号)上告
  1審の判断を一部補正した上で、控訴棄却
  月刊「税理」令和4年1月号付録・租税判例の回顧令和2年下半期 

シ 東京地裁令和2年1月17日判決(平成29年(行ウ)571号)控訴
 国外(台湾)にある販売者が(E、F)が日本国内販売業者(A、B、C、D)から商品買い付けを行い香港に商品を輸出する取引において、原告は自己の計算で商品の注文・代金の支払い・商品の発送に関与していなかったが、日本国内販売業者はE・Fの依頼により商品販売代金の領収書は原告を宛名としていた。
  原告の課税仕入れにはあたらない。
  月刊「税理」令和3年10月号付録・租税判例の回顧令和2年上半期 

 東京高裁令和2年10月15日判決(平成2年(行コ)40号)上告
 原判決が認定説示するとおり,本件各国内販売業者から本件各商品を仕入れたの は,台湾の小売業者であり,控訴人が,本件各国内販売業者から本件各商品の譲渡を受けたとは認められないし,台湾の卸売業者に本件各商品を譲渡したとも認められない。したがって,控訴人は,本件各商品について,消費税法7条1項柱書き所定の「課税資産の譲渡等」を行ったものとは認められないから,輸出免税に関する同条項の適用を受ける余地はなく,このことは,控訴人を「輸出者」とする輸出許可通知書が発行されていたとしても左右されるものではない。
また,このように,控訴人に輸出免税等に関する消費税法7条1項が適用されなかったとしても,台湾の小売業者が,納税管理人(通則法117条)を選定した上で,消費税法の定める手続に従って消費税等の還付を受けることは可能であるから,国外で消費される本件各商品に係る消費税等について,必ず二重課税の状態が発生するものではなく,輸出免税制度の趣旨に反するものとはいえない。
  月刊「税理」令和4年1月号付録・租税判例の回顧令和2年下半期 

ス 大阪地裁令和2年3月11日判決(平成30年(行ウ)157号)控訴
 「本件売買契約」においては,代金2億円のうち契約締結日(平成24年11月30日)に支払われるのは手付金300万円のみであり,その余の1億9700万円は,契約締結日の約1箇月後である同年12月28日までに支払われることとされ,本件不動産の所有権が本件売主から原告に移転するのは,代金全額が支払われた時点とされ,本件売主は,これと同時に本件不動産の引渡し及び所有権移転登記手続をすることとされていた。本件建物の所有権が原告に確定的に移転したのは,本件売買契約の締結日(平成24年11月30H)ではなく,原告が本件売買契約に基づく代金を全額支払って本件建物の所有権を取得し,その引渡しを受けた日(同年12月21日)であり,同日が,本件建物 の取得に係る「課税仕入れを行った日」に当たるものというべきである。
 以上の次第であるから,本件建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」は,平成24年12月21日であり,本件課税期間に属しない
  租税判例の回顧令和2年上半期 月刊「税理」令和3年10月号附録

 大阪高裁令和2年11月26日判決(平成2年(行コ)61号)確定
  原審判断を一部補正した上で、控訴棄却
  月刊「税理」令和4年1月号付録・租税判例の回顧令和2年下半期 

セ 大阪地裁令和2年6月11日判決(平成30年(行ウ)149号)控訴
 本件売買契約の内容及び履行状況からすると,平成26年5月26日に,本件の売主が本件不動産につき原告への所有権移転登記手続をし,原告におぃて本件不動産の使用収益が可能となり,本件不動産の引渡しがあったというべきであって、本件建物に係る売買代金請求権が客観的にみて実現可能な状態となった時点,すなわち,同請求権について権利が確定した時点は、同日であると認めるのが相当である。
 したがって、本件建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」は,平成26年5月26日であると認められるのであって、上記日は本件課税期間に属さないというほかない。
  月刊「税理」令和3年10月号付録・租税判例の回顧令和2年上半期 

 大阪高裁令和2年11月27日判決(平成2年(行コ)97号)確定
  原審判断を一部補正した上で、控訴棄却
  月刊「税理」令和4年1月号付録・租税判例の回顧令和2年下半期 

ソ 神戸地裁 令和2年6月16日判決(平成30年(行ウ)57号)
 不動産業を営む株式会社である控訴人の本件不動産の取得に係る支払対価の額及び本件不動産の所有権移転登記手続等に係る司法書士の報酬の額について、本件不動産に係る売買契約の締結日である平成25年10月19日を課税仕入れを行った日として消費税の確定申告(平成25年10月期)をした。
 処分行政庁から本件建物の取得に係る支払対価の額及び本件報酬の額に係る課税仕入れを行った日は「仕入れの相手方において、当該資産の譲渡等について、同時履行の抗弁などの法的障害がなくなり、対価を収受すべき権利が確定した日をいうべきものと解すべきである。」
 本件建物の引渡し及び司法書士による役務の提供(所有権移転登記)があった平成25年11月6日であるとして平成25年10月期および平成26年10月期の消費税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。
  月刊「税理」令和3年10月号付録・租税判例の回顧 令和2年上半期 
 
 大阪高裁 令和3年4月28日判決(令和2年(行コ)109号)
  納税者の請求を棄却した原審の判断を維持し、控訴を棄却し確定
  月刊「税理」令和4年8月号付録・租税判例の回顧 令和3年上半期 
 
(2)消費税法30条2項【課税売上割合95%未満の仕入税額控除の選択】
ア 平成6年6月23日裁決(国税裁決事例集No.47 平成6年分第2)
 本件課税期間の課税売上割合が零パ-セントであり、控除税額の計算方法として一括比例配分方式を選択しているから、本件課税期間に係る控除対象仕入れ税額は零円となる。

イ 福岡地裁(平7.9.27判決)平6(行ウ)27号
 課税売上割合が95%未満の場合には、調整対象固定資産の仕入に係る消費税額をその仕入を行った日の属する課税期間において全額控除することはできない
  週刊税務通信No.2415

福岡高裁(平8.7.17判決)平7(行コ)17号
最高裁 (平11.6.24判決)平8(行ツ)223号 上告審維持
 本件の場合は、課税売上げ割合は零パ-セントとなる。また、消費税法33条は、調整対象固定資産を仕入れた日の属する課税期間から起算して第3年度の課税期間において調整することのみを定めており、それ以外に納税者が主張するような当該課税仕入れが行われた日の属する課税期間における調整は認めていないとした原審の判断を維持した。
  福岡高裁 月刊「税理」 平成9年12月号付録・租税判例の回顧
  最高裁  月刊「税理」 平成12年7月号付録・租税判例の回顧

ウ 平成7年4月18日裁決(国税裁決事例集No.49 平成7年分第1)
 課税仕入れ等の税額の算出にあたり、個別対応方式による計算は、一括比例配分方式により計算することとする課税期間が2年を経過していないため当該方式による計算はできない。

エ 福岡地裁(平9.5.27判決)平8(行ウ)4号
 課税売上割合25.18%の土地売買業者が、当初申告で、一括比例配分方式を選択した後で、個別対応方式の方が有利であることに気づき更正の請求を行なったが、確定申告において納税者が任意に選択した以上、税額計算の誤りとは認められない。
  月刊「税理」 Vol.40 No.9、 月刊「税理」 Vol.40 No.10
  週刊税務通信No.2502
  行政裁判集48巻5-6号456頁

オ 平成7年度決算検査報告 会計検査院 平8.12.11
 課税売上割合が95%未満でありながら建物の取得等に係る消費税の全額が控除されていた

カ 平成8年度決算検査報告 会計検査院
 課税売上割合の計算を、土地の譲渡に係る収入金額を資産の譲渡の対価の額に含めないで計算していた。

キ 大阪高裁(平14.12.20判決)平14(行コ)69号
 課税売上割合95%未満の住宅貸付事業者が、個別対応方式の選択により消費税の仕入税額控除が認められなかったことが課税売上95%以上の課税事業者に比べ、税の公平性に反し、納税者の財産権・生存権を侵害し違憲であるとの主張に対して、租税法の定立は、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的な判断に委ねる他なく、裁判所は基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないというべきであり、その立法目的が正当である限り違憲とはいえない。
  月刊「税理」 Vol.46 No.13

ク 神戸地裁(平14.7.1判決)平13年(行ウ)24号
大阪高裁(平14.12.20判決)平14年(行コ)69号
 納税者は、個別対応方式を選択した消費税の課税業者であり、本件補修費用は非課税取引である住宅の貸付事業に要したものであるから、補修費用に係る消費税額について仕入控除を認めなかった本件更正処分は適法である。
 大阪高裁 月刊「税理」2003年12号付録・租税判例の回顧(平成14年下半期)

ケ 平成13年2月23日裁決(国税裁決事例集No.61)
 販売代理店契約の解除に伴う在庫品の返品に係る消費税額を、課税仕入れ等の消費税額から控除すべき時期は、代理店契約の末日を含む課税期間であるとした

コ 平成13年12月21日裁決(国税採決事例集No.62)
 請求人が採用した個別対応方式における課税資産の譲渡等に要するものとその他の資産の譲渡等に要するものとの区分方法は合理的基準の一つであるとして、異議決定で採用した一括比例配分方式による計算を排斥した

サ 平成17年11月10日裁決(国税採決事例集No.70)
 請求人は、本件各信託不動産を、譲渡する目的だけでなく、その賃貸収入を得る目的を併せ持って取得したものであり、また、本件課税期間において、本件各信託不動産を取得した日から課税資産の譲渡等に該当しない当該各不動産に係る賃貸収入(住宅の貸付け)が生じている以上、本件各信託不動産に係る課税仕入れにつき、個別対応方式において、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することはできず、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に区分するのが相当である

シ 平成18年2月28日裁決(国税採決事例集No.71)
 調剤薬品等は、そのほとんどが非課税売上げとなっているものではあるが、現実的に、 課税売上となる販売として[1]他の保険薬局(同業者)への小分け販売、[2]医師の指示書による販売、[3]自費診療(患者負担10割)による販売が発生していることから、その仕入れた時点における区分は、課税売上げのみに要する課税仕入れ又は非課税売上げのみに要する課税仕入れとは認められないから、 共通売上対応分の課税仕入れとするのが相当である。

ス 平成19年2月14日裁決(国税採決事例集No.73)平成19年分第1
 いわゆる個別対応方式により課税仕入れに係る消費税額を計算する場合における「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」及び「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」の区分は個々の課税仕入れについて行う必要がある。

セ 東京地裁平成24年9月7日判決(平23(行ウ)184号)
 国内において行われた課税仕入れについて、消費税法30条2項1号に規定する個別対応方式により控除対象仕入税額を計算するときは,「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」の税額(同号イ)に「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」(同号ロ)を加算する方法によるものとされるところ,その課税仕入れの区分の判断については,同号の文言等に即して,当該課税仕入れが行われた日の状況に基づいてその取引が事業者において行う将来の多様な取引のうちどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断すべきものと解するのが相当である。
 本件課税仕入れについては,いずれも,原告が行う事業活動を成す取引全体のために要するものであったと認められるから,消?税法30条2項1号ロに規定する「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に区分されるべきものということができる。
  月刊「税理」平成25年12月号付録・租税判例の回顧平成24年下半期 

ソ 東京地裁平成24年12月13日判決(平23(行ウ)281)確定
 中古賃貸マンションの日割り賃料を精算せず売主い帰属させる合意書の成立が認められ、原告(買主)は課税売上割合が95%未満となり控除対象仕入税額控除が可能となった。
  月刊「税理」平成25年12月号付録・租税判例の回顧平成24年下半期 

タ さいたま地裁平成25年6月26日判決(平23(行ウ)33号)
 本件において,課税仕入れであるA社によるマンションの取得は,当該課税仕入れの日の当日において,当該マンションを販売する(信託受益権を譲渡する)目的とともに,住宅として貸し付けることを目的としてされたと認められることから,「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」ではなく,「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に該当することとなる。
  月刊「税理」平成26年7月号付録・租税判例の回顧平成25年上半期 

チ 名古屋地裁平成26年10月23日判決(平25(行ウ)112)
 課税仕入額の区分については,当該課税仕入れが行われた日の状況に基づき,客観的に判断すべきものと解するのが相当である。そこで本件課税仕入れが行われた時点(本件建物の引渡時点)を基準時として本件課税仕入れの用途区分について検討すると、本件建物は,事務所及び住宅を有する建物として設計?建築され,設計・建築当時から2階部分の居室を事務所として使用し、3階から10階までの各居室を主に居住用住宅として貸し付けることが予定されていたこと,原告は,本件課税仕入れの日より前に本件拠出を事務所(部屋の一部。同部屋のその余の部分は原告自らの事務所として使用)や居住用として賃貸していたことなどの事情及び本件課税仕入れが行われた日の状況から客観的に判断すると,本件述物は「課税資産の譲渡等」(課税売上げ)である住宅以外の貸付けのみを目的として取得したものであるとも,「その他の資産の譲渡等」(非課税売上げ) に当たる住宅の貸付けのみを目的として取得したものであるともいえないから,本件建物に係る課税仕入れ(本件課税仕入れ)は,消費税法30条2項1号所定の「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に該当する。
  月刊「税理」平成27年12月号付録・租税判例の回顧平成26年下半期 

ツ 東京地裁令和元年10月11日判決(平成29年(行ウ)590号)
  ①原告は,不動産の買取再販?を主な事業としていること,②原告は,本件各建物をいずれも事業として購入し,いずれも会計システムに棚卸資産として入力していること,③本件各建物の全部又は一部は,購入時に住宅用として賃貸されており,購入によって,原告は,賃貸人としての地位を承継し,引渡日以降の賃料を収受していたことが認められる。
 これらの事情を踏まえ,本件各課税仕入れが行われた日の状況に基づいて検討すると,本件各建物は,本件各課税仕入れが行われた日の状況において,販売に供されるとともに,一定の期間,住宅用の賃貸にも供されるものであったと認められることから,課税資産の譲渡等にのみ要するものとはいえず,また,その他の資産の譲渡等にのみ要するものともいえないのであって,本件各課税仕入れは,共通課税仕入れに該当するというべきである。以上のとおり,本件各課税仕入れは共通課税仕入れに区分されるものであって,本件各更正処分は適法である。
  月刊「税理」令和3年1月号付録・租税判例の回顧令和元年下半期 

テ 東京地裁令和2年9月3日判決(平成30年(行ウ)559号)控訴
  原告は平成27年3月期~29年3月期まの課税期間において転売目的で賃貸用建物合計84棟の購入(課税仕入れ)を行い、賃料収入を収受し、個別対応方式で控除対象仕入税額を計算して消費税の確定申告を行った。
  本件ビジネスモデル下における課税仕入れについては,仕入日に将来の賃料収入が確実に見込まれるというだけで直ちに共通対応課税仕人れに区分されるものと解すべきではなく,当該事業者か行う経済活動に関する個別の事情に基づく検討がされるベきである。
 原告が本件事業において仕入れた収益不動産を賃貸して得られる貨料収入は, 当該収益不動産の販売を行うための手段としての賃貸から不可避的に生じる副産物として位置づけられるものであって,このことは,原告の会計処理における取扱いや,収益不動産の仕入れ及び販売の際に原告がどれだけ賃料収入を得られるかが考慮に入れられていないことからも裏付けられるものである。
 そして,原告が実際に得ている賃料収入も,販売収入と賃料収入の総和に対して直近3課税期間の平均で5%未満にとどまっている。また,これらに関しては,直近3課税期間と本件各課税期間とで有意な差が見られない。
 これらの事実関係に照らせば,本件各仕入日に上記のような賃料収入が見込まれることをもって,本件各課税仕入れにつき「その他の資産の譲渡等」にも要するものとして共通対応課税仕入れに区分することは,本件事業に係る経済実態から著しくかい離するばかりでなく,課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点に照らしても,相当性を欠くものといわざるを得ない。

    事業者が将来におけるどのような取引のために当該課税仕入れを等を行ったのかを認定して行うべき。
したがって,本件各課税仕入れは課税資産の譲渡等にのみ要するものとして課税対応課税仕入れに区分するのが相当であるから,本件各課税仕入れに係る消費税額は,その全額が控除対象仕入税額となる
  月刊「税理」令和4年1月号付録・租税判例の回顧令和2年下半期 
  
  東京高裁令和3年7月29日判決(令和2年(行コ)190号)上告
  一審判決取消で納税者の請求を棄却した。
事業者の収益不動産事業におけるビジネスモデルにおいては、将来、住宅の貸付けによる賃料収入という非課税売上げが見込まれるとともに、本件各マンションの売却による課税売上げも見込まれるから、本件各課税仕入れは、消費税30条2項1号に規定する課税対応課税仕入れ及び非課税対応課税仕入れのいずれにも該当せず、共通対応課税仕入れに該当するものと解するのが相当である。
  月刊「税理」令和5年1月号付録・租税判例の回顧令和3年下半期 

  最高裁令和5年3月6日判決(令和4年(行ヒ)10号)  上告棄却
 事業者の事業において、本件各課税仕入れは課税資産の譲渡等である本件各建物の転売のみならず、その他の資産の譲渡等である本件各建物の住宅として賃貸にも対応するものであるということができる。
 本件課税仕入れは、その事業者の事業における位置付けや原告の意図等にかかわらず、共通対応課税仕入れに該当するというべきである。
  ジュリスト2023年7月号 租税判例速報 PP10~11

ト 神戸地裁令和2年9月29日判決(令和元年(行ウ)71号)確定
 原告は,消費税法基本通達9-1-13 (以下本件通達」という。)の存在を指摘し,課税仕入れを行った日については,法人税法と同様,納税者に引渡日と契約の効力発生日の選択可能性が認められている旨主張するが、本件通達は、引渡日を原則としつつ、契約内容によっては引渡しの事実関係が外形上明らかでない場合があることから,これを補完する趣旨で、あるいは,契約内容や当事教の意思等から契約締結日が資産の譲渡の日と認められる場合もあることなどを踏まえて,ただし書が設けられたものであると解され,本件売買契約に関しては,本件通逹で定める引渡日が平成25年2月14日であることは明らかであるから,本件通達のただし書が適用される余地はない。
 以上のとおりであって,本件建物の取得に係る支払対価の額に係る「課税仕入れを行った日」は,本件課税期間には属しないものとされる。
 月刊「税理」令和4年1月号付録・租税判例の回顧令和2年下半期 

(3) 消費税法30条4項
福岡地裁(平9.5.27判決)平8(行ウ)4号
 区分経理をしている事業者にも、一括比例配分の適用を認める法30条4項の趣旨は、控除税額の算出について区分を要しない分、個別対応方式に比して簡便な税額算出方法であり、右事業者には区分経理を理由にその適用を否定することは、区分経理の手間をかけた者に簡便な税額計算を認めないことになって妥当でないとの配慮に基づくものと解される。
 税理 Vol.40 No.10

 
(4)消費税法30条7項【帳簿の保存】
ア 平5.11.16裁決(国税裁決事例集No.46 平成5年分第2)
 消費税の仕入税額控除について、当初調査において帳簿等の提示がなかったから、適用は認められない。

イ 徳島地裁(平10.3.20判決)平7(行ウ)8号
 反面調査で推計した総所得金額をもとに消費税の課税標準を推計したが、帳簿が不提示であったため、調査時点での不提示は即、消費税法30条7項の帳簿等の「保存しない場合」に該当するとして、仕入税額控除金額をゼロとした。
 速報税理平10.6.1号、税理Vol.41 No.10、1998、週刊税務通信No.2546
(控訴審)
高松高裁(平11.4.26判決)平10(行コ)9号
 法30条7項の「保存しない場合」には、適法な税務調査に際し、税務職員からその提示・閲覧を求められたときに正当な理由なくこれに応じない場合も含まれると解するのが相当である。(原審維持)
 月刊「税理 」2000年7号付録・租税判例の回顧

ウ 東京地裁(平10.3.27判決)平8年(行ウ)230号
 法及び令は、課税仕入れに係る消費税の調査、確認を行うための資料として帳簿等の保存を義務付け、その保存を欠く課税仕入れに係る消費税額については仕入税額控除をしないこととしたものと解される。
 法30条7項の趣旨からすれば、右記載は真実の記載であることが当然に要求されているというべきである。
 本件帳簿は、原告が市販の納品書に仮名の仕入先及び仕入金額を記載して納品書から本件仕入帳に転記するという方法で作成されており、法30条7項で保存が要求されている法定帳簿に該当しないことは明らかであって、原告には法30条1項の適用はないというべきである。
 速報税理平10.9.1

エ 大阪地裁(平10.8.10判決)平7年(行ウ)25号
 保存という文言の通常の意味などからしても、税務調査の際に納税者が請求書等の提示を拒否したことに消費税法30条7項の「保存しない場合」に結び付けるのは法解釈の域を超えている。
 週刊税務通信No.2546、判例時報1661号、判例タイムズ990号

オ 津地裁(平10.9.10判決)平6年(行ウ)9号
 課税処分後に帳簿等を提示しても消費税の仕入税額控除は認められないとされた。
 法30条7項は、帳簿等の保存を仕入税額控除の用件とし、仕入税額の証明手段を法定の帳簿等に限定していると解すべき。
 納税者が法定の帳簿等を保存していない場合には、他の証拠資料によって課税仕入額を合理的に推認することができる場合であっても、仕入税額を控除することは認められない。
 税務職員が税務調査として帳簿等の提示を求めたときは、納税者はこれに応ずることを当然の前提としているというべき。
 税務調査において帳簿等の提示を拒否した納税者は、仕入税額控除を受けられない。
  月刊「税理」Vol.41 No.14、速報税理平10.10.11号、週刊税務通信No.2546、判例時報1651号

カ 東京地裁(平10.9.30判決)平6年(行ウ)229号
 法30条7項 の「保存」とは、法定帳簿等が単に存 在しているということだけでなく、保 存期間を通じて定められた場所におい て、税務職員の質問検査権に基づく適法な調査によりその内容を確認するこができる状態の保存を継続していることを意味するというべきである。
  ジュリスト1161号(1999.8.1)、 判例時報1661号に、上 記大阪・津・東京の3つ の判例を掲載

キ 東京地裁(平11.3.30判決)平8年(行ウ)143号
 法定帳簿の保存とは、質 問調査権に基づく適法な調査があれば 、調査官がその内容を確認できるよう に提示できる状態や態様で保存を継続 していることが必要である。
  訟務月報46巻2号 899頁、速報税理平11.6.1・ 調査の顛末も若干紹介しています。
  速報税理平11.8.1、月刊「税理」2000年7月号付録・租税判例の回顧

ク 横浜地裁(平11.6.9判決)平7年(行ウ)16号
 法30条7項 にいう帳簿等の保存は、課税要件とい う観点からすると、控除する仕入税額 といった直接的かつ実体的な事実では なく、間接的かつ手続的な事実である。(所法95条と法法69条の税額控除と比較して帳簿控除を手続と判断しています。)
 行政処分の取消訴訟において違法性の判断の基準時は処分時と解すべきであるから、その後の時点で帳簿等を保存していたとの事実が証明されても更正処分の適否に直接には結びつかない。
  税理199 年8月号、税理2000年7号付録 租税判例の回顧
参考:週刊税務通信No.2546,2549では、東京、徳島、大阪、津の各地裁の判決を比較論評しています。
  :判例時報1676号(1999年8月1日号)では、上記大阪、津、東京の3つの判例を比較論評しています。

ケ 広島地裁(平11.2.18判決)平8年(行ウ)6号
 本件領収書はいずれも真 実の仕入先の氏名又は名称が記載され ておらず、納税者において当該仕入先 であると信じたことについて相当の理 由があったと認めるに足りる証拠はな いとして、仕入税額控除を否定した。
  月刊「税理」2000年7号付録・租税判例の回顧

コ 仙台地裁(平11.9.30判決)平9年(行ウ)22号
  税理2000年4号 判例カ-ド
 税務調査において仕入帳 の提示を求められたのに際し、「書き 写しやコピ-はしないでもらいたい。 」との条件を付すことは「正当な理由 の提示拒否として、法30条 7項にいう法定帳簿等 の「保存」の要件を欠くことに帰する 。

仙台高裁(平12.9.28判決)平11年(行コ)14号
 申告に係る課税仕入の存否を確認し、課税仕入に係る消費税額を把握するためには仕入先の調査が必要となる場合もあるから、その氏名・名称等のコピー又は書き写しの必要性が生ずるのであって、右確認が形式審査すなわち正規仕入帳の閲覧のみで足りるとは到底いえないから、控訴人がコピー等をしないことを条件として正規仕入帳を提示したのは、提示を拒否したことと異ならず、右拒否に正当な理由は認められない。

サ 税理2003年3号 判例カ-ド
 原告は法に定める帳簿書類等を作成ないし保存していなかったと認められるから、仕入税額控除は認められない。

シ 静岡地裁(平14.12.12判決)平12年(行ウ)2号
 帳簿書類等が単に存在し ているということだけではなく、税務 職員による適法な質問検査権に基づく 納税者に対する税務調査により直ちに その内容を確認することができる状態 、換言すれば、適法な提示要請があれ ば直ちにこれを提示できる状態での 保存を意味する。
  月刊「税理」2003年10月号

ス 名古屋高裁(平12.3.24判 決)平10年(行コ)32号
 納税者が法定帳簿等を保 存していない場合には、他の証拠資料 によって課税仕入額を合理的に推認す ることができる場合にも仕入税額控除 は認められず、また、30条 7項にいう「保存」は 、単に物理的な保存では足りず、税務 調査等のために税務職員等により適法 な提示要求がされたときにはこれに直 ちに応ずることができる状態での保存 を意味し、税務職員等により適法な提 示要求がされたにもかかわらず、正当 な理由なく納税者がこれに応じなかっ たときはその時点において保存のなか ったことが事実上推認される。
  月刊「税理」2001年9号付録・租税判例の回顧

セ 前橋地裁(平12.5.31判 決)平7年(行ウ)4号
 納税者が税務職員による 適法な提示要求に対して、正当な理由 なく帳簿又は請求書等の提示を拒否し たときは、後に不服申立手続や訴訟等 において帳簿又は請求書等を提示して もこれによって仕入税額控除を認める ことはできない。
  月刊「税理」2001年9月号付録・租税判 例の回顧(平成12年上 半期)

ソ 岐阜地裁(平12.7.13判 決)平6年(行ウ)2号
 商法30条7項 にいう「保存」とは~法令の規定する 期間を通じて、法令の規定する場所に おいて、税務職員の適法な税務調査に よりの内容を確認することができる状 態での保存を継続していることを意味 するものと解するのが相当である。
 提示要求に正当な理由なくこれに応じなか った事実が主張立証される為その当時 において、法定の要件を満たした状態 での帳簿等の保存がなかったことが推 認される。
  月刊「税理」2001年12月号付録・租税判例の回顧(平成12年下 半期)
控訴 名古屋高裁(平14.4.18判 決)平12年(行コ)37号
 原審判断を維持した。
  月刊「税理」2003年7号付録・租税判例の回顧(平成14年 上半期)

タ 徳島地裁(平13.1.26判 決)平10年(行ウ)2号
 単なる符号等による記載 のみでは、法定の記載事項を具備した とは認められず、かかる符号等から法 定の記載事項を特定し得る帳簿書類等 を保存している場合に限り、法30条 7項の「帳簿又は請求 書等」と認められるというべきである 。
 本件は、帳簿不備で青色申告承認の取消処 分を受けている。
  月刊「税理」2002年7号付録・租税判例の回顧(平成13年 上半期)

チ 京都地裁(平13.3.30判 決)平7年(行ウ)2号
 法30条7項 の保存とは、税務職員が納税者に対し 、社会通念上当然に要求される程度の 努力を行って適法に法定帳簿や法定請 求書等の提示を求めたのに対し、納税 者がこれを明確に拒絶したと認められ る場合には、法定帳簿を保管していな いか、保存がなかったとの推認が強く 働くものと解すべきである。
  月刊「税理」2002年7号付録・租税判例の回顧(平成13年 上半期)

ツ 大分地裁(平13.10.30判 決)平11年(行 ウ)5,6号
 納税者が時間的余裕がな いため営業に関する帳簿を全く作成し ておらず、又、領収書等の書類を受領 したり保管したりしていないことに、 やむを得ない事情を認めることはでき ないとして、法30条7項 ただし書の適用を否定した。
→控訴
  月刊「税理」2002年7号付録・租税判例の回顧(平成13年 上半期)

テ 岡山地裁(平14.6.19判 決)平12年(行ウ)17号
 必要経費の額を類似同業者の経費率によっ て推定するのと同様に、課税仕入に係 る消費税の額を推定して仕入控除を認 めるべきとの主張に対して、仕入税額 控除の要件は消費税法に規定されてお り、それ以外に控除を認める規定はな い。
  税理2003/7号付録 租税判 例の回顧(平成14年上 半期)
ト 静岡地裁(平14.12.12判 決)平12年(行ウ)2号
 税務職員が社会通念上当然に要求される程度の努力を行って、適法に帳簿書類等の提示を求めたにもかかわらず、合理的理由なく納税者がこれに応じない場合には、納税者は帳簿書類を保管していないか、少なくとも、保存がなかったとの推定が働くべきであるとして、法30条7項の適用を否定した。
  月刊「税理」2003年12月号付録・租税判例の回顧(平成14年下半期)

東京高裁(平15.10.23判決)平15年(行コ)10号
 第1審の判断を維持した上で
 適法な提示要求に正当な理由なく応じなかったため,税務職員において確認できなかった以上,帳簿等が前記状態にはなかったものとして,仕入税額控除を否認することができるものである。仮に控訴人が主張するような主張立証により帳簿等の保存があったことを認め,消費税の更正処分を取り消すことになるとすれば,課税処分の安定性を著しく損ねることになり,これを避けるためには税務当局は更正等の処分を差し控えるほかなくなるが,正当な理由なく帳簿等の提示を拒否した者のために,消費税法がこのような事態を予定しているとは到底解されず,したがって,その後において帳簿等が保存されていたことを主張立証したところで,更正処分の効力に影響を及ぼすものではない。

ナ 岡山地裁(平14.7.23判決)平12年(行ウ)18号
 法30条7項の但し書の宥恕規定は、税務職員が帳簿等の有無及び記載内容を確認するためのものであることから、帳簿等の保存を仕入税額控除の要件とし、仕入税額の証明手段を法定の帳簿等に限定していると解すべきである。
  月刊「税理」2003年12月号付録・租税判例の回顧(平成14年下半期)

広島高裁岡山支部(平16.9.30判決)平16年(行コ)3号
 課税庁において、正当な理由なく事業者が提示要求に応じなかった事実を主張、立証した場合には、帳簿又は請求書等を「保存」していないものと事実上推認できるというべきであり、事業者が、訴訟段階において帳簿書類等を提出するだけでは、事業者は、単にその物理的な保存を主張、立証しているにすぎないから、前記推認を覆すことはできず、税務調査の時点において帳簿等が保存されていたことを推認させる事実の具体的な立証がされて初めて前記推定が覆されるというべきである。

ニ 平成14年4月3日裁決(国税裁決集No.63)
 仕入税額控除に係る請求書等には、真実の仕入先の氏名等が記載されておらず、また、その仕入先が真実であると信じざるを得ない状況にはなかったとして仕入税額控除を否認した。
  税理2000年7号付録 租税判例の回顧

ヌ 神戸地裁(平15.7.18判決)平11年(行ウ)23号
 法30条7項にいう法定帳簿の「保存」とは、税務職員の適法な提示要請に応じて、直ちに提示できる状態での保存を意味するから ~ 納税義務者が正当な理由なくその提示を拒否した場合には、納税義務者は税務調査の際に法定帳簿を保存していなかったものと認められる。

ネ 熊本地裁(平15.11.28判決)平14年(行ウ)4号
 法30条7項にいう「帳簿の保存」とは、単なる物理的な帳簿等の保管にとどまるものではなく、税務職員による質問検査権に基づく適法な調査により直ちにその内容を確認できるような状態での保管を意味する。
 提示を拒否していることからすると、納税者は、税務職員による質問検査権に基づく適法な調査により直ちにその内容を確認できるような状態で帳簿等を保管していなかったことが推認される。

ノ 熊本地裁(平12.08.31判決)平9年(行ウ)17号
 法30条7項の「帳簿等の保存」の意義は、単なる物理的な帳簿の保存と解すべきではなく、税務職員による適法な提示要求に対して、帳簿等の保存の有無及びその記載内容を確認し得る状態におくことを含むと解するのが相当である。  たとえ、税務調査時において帳簿等が物理的に保存されていたとしても、それを後の訴訟等で主張・立証することはもはや許されないというべきである。

ハ 平15.6.26裁決(国税裁決事例集No.65 平成15年分)
 原処分調査中に請求人が提示した資料は、消費税法第30条第7項の要件を充たさないので、他の証拠資料によって課税仕入れに係る支払対価の額を合理的に推認できる場合であっても、仕入税額控除は認められない。

ヒ 最高裁(平16.12.16第一小法廷判決)平成13年(行ヒ)第116号
 消費税額から仕入れに係る消費税額を控除することを定める消費税法の規定は,事業者が 税務検査の際に適時に提示し得るように態勢を整えて仕入れに関する帳簿,請求書等を保存 していなかった場合には,適用されない。
 2審 東京高等裁判所 (平成12年(行コ)第219号)

フ 最高裁(平16.12.20第二小法廷判決)平成16年(行ヒ)第37号
 消費税額から仕入れに係る消費税額を控除することを定める消費税法の規定は,事業者が税務検査の際に適時に提示し得るように態勢を整えて仕入れに関する帳簿,請求書等を保存していなかった場合には,適用されない
 2審 東京高等裁判所(平成15年(行コ)第10号)。

ヘ 広島地裁(平17.10.27判決)平成12年(行ウ)第8号
 事業者が、これ(法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存すること)を行っていなかった場合には、法30条⑦項により、同項ただし書所定の事情を説明しない限り、同条①項の規定は適用されないと解される。納税者は、上記提示を拒否した書類について、税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかったことが推認されるから、法30条⑦項により、同保存のない仕入れに係る消費税額については同条①項の適用はない。

ホ 東京高裁(平19.10.31判決)平成19年(行コ)第129号
 控訴人が第三者の立会なしでは税務調査に応じないという立場を崩さず、そのために被控訴人職員による検査による検査に当たり帳簿等の内容の確認ができなかったのであるから、消費税法30条⑦項及び法人税法127条①項1号に該当する事実があったというべきである。
 消費税法30条⑦項は、帳簿等という確実な資料を保存させることが必要不可欠であるとの考えの下に、事業者が適時に帳簿の記載内容の正確性が確認内容になるように態勢を整えて保存しなかった場合には、同条にいう帳簿を保存しない場合当たるとして仕入税額控除を認めないという不利益を課すものと解される。そうすると、他の資料で課税仕入れに係る対価の額を認定したり、推計したりすることは、同項に反して許されないものというべきである。

マ 神戸地裁平成26年7月29日判決(平24(行ウ)91号)
 消費税法には,同法30条7項に規定する「帳簿」につき,同条8項に記載要件の規定はあるが,「帳簿」という概念自体の定義規定は置かれていないところ,仕入税額控除制度は, 広く,かつ,薄く資産の譲渡等に課税する消費税の計算の基本をなすものであり,「帳簿」該当性が否定されると,この基本の計算が排除される法的不利益が生じることに照らせば,「帳簿」該当性の判断は,個別具体的な書面について,同法58条が帳簿の備付け等を定め,同法30条7項が帳簿及び請求書等の保存を求めた平成6年の消費税法改正の趣旨を踏まえて行う必要があると解され,法に概念定義もないのに,あらかじめ「帳簿」の厳格な概念定義を一義的に定め,これに当たるか否かによつて「帳簿」該当性を判断することは相当でなく,一方,同条7項は,同法58条と同様,飽くまで「帳簿」という文言を用いているのであつて,その概念定羲がないとしても,社会通念に照らして「帳簿」に当たるとは認められない書面についてまで,同法30条8項の記載さえあれば「帳簿」に含める趣旨であるとも解されない。結局,ある書面が同法30条7項に定める「帳簿」に該当するか否かは,同条8項所定の記載要件の有無のほか,上記趣旨を踏まえ、社会通念に照らして判断するほかない。
 原告は,本件課税仕入れに係る法定帳簿を,同法62条に基づく税務職以による上記帳簿及び請求書等の検査に当たり,適時に提示することが可能なように態勢を整えてこれらを保存していたということはできないから,同法30条7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等……を保存しない場合」に当たると認められる。
  月刊「税理」平成27年12月号付録・租税判例の回顧平成26年下半期 

ミ 東京地裁平成27年5月14日判決(平24(行ウ)858号)
 原告は,本件調査事業年度の帳簿及び請求書等について,消費税法62条に基づく本件調査の担当職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかったというベきであるから,消費税法30条7項に該当し,同項ただし書きにいう「やむを得ない事情」も認められない。
  月刊「税理」平成28年7月号付録・租税判例の回顧平成27年上半期 

(5)消費税法30条8項【帳簿の構成要件の充足】
ア 平6.12.12裁決(国税裁決事例集No.48 平成6年分第2)
 帳簿等には、仕入先としてその氏名の氏に相当する部分が記載されているのみであり、また、請求人は、本件調査の際に本件仕入先を明らかにして記載不備を補完しようとしなかったことから、帳簿又は請求書等の保存がない場合に該当するので、仕入税額控除の適用は認められない。

イ 平6年12月21日裁決(国税裁決事例集No.48 平成6年分第2)
 絵画等美術品の仕入先元帳等に記載された取引の相手方の氏名又は名称についてその氏名又は名称が虚偽のものと推定されるとして、消費税の仕入税額控除を適用することはできない。

ウ 平成7年5月31日裁決(国税裁決事例集No.49 平成7年分第1)
 店頭における商品の仕入に際し、仕入先が言うままに名称を帳簿等に記載している仕入取引については、その名称が真実のものでないと推認されので消費税の仕入税額控除はできない。

エ 東京地裁(平9.8.28判決)平7年(行ウ)232 号
 課税仕入の要件としての法定帳簿の保存は、真に課税仕入が存在するかどうかを確認するとともに、消費税の調査・確認のためのものである。30条7項の趣旨からすれば、右記載は真実の記載であることが当然に要求されているというべきである。
 真実の氏名又は名称が判明しているにも係わらず敢て仮名を記載していた仕入帳簿では、仕入税額控除が認められない。
 控訴審東京高裁(平10.9.30判決)平9年(行コ)128号原審維持
 上告
  週刊税務通信No.2491、速報税理平9.9.21、月刊「税理」Vol.41 No.2、税研Vol.1377 日本税務研究センター

オ 高松地裁(平10.9.28判決)平8年(行ウ)1号
 取引の相手方の特定方法としては、個人については氏名により、法人については名称ないし商号によるのが一般的であるから、法30条8項1号イは、課税取引の相手方が個人である場合には「氏名」を、法人その他の団体である場合には「名称」(商号)を記載することとしたものであると解される。個別の取引の相手方である個人の「氏名」を記載すべきであり、判取帳記載の氏等はいずれも法30条8項1号イにいう「名称」には当らない。
 本件訴訟提起後に作成された表により仕入税額控除のための帳簿の法定記載事項が補充されたからといった本件処分適法性が左右されるものではない。
  税務弘報Vol.47 No.6 1999年5月

(6)消費税法30条9項【30条第7項に規定する請求書等】
 東京地裁平成20年2月20日判決(平18(行ウ)684号)(確定)
 本件において、輸入消費税の申告納付は、B社の名義で行われたものである。
そうすると,B社が本件輸入消費税の納税義務者であったということが公法上確定されたというべきであるから,本件輸入消費税については,原則として,B社が課税事業者として納付すべき消費税において控除されることが予定されるものであるというべきであって,特段の事情がない限り,輸入消費税の申告名義人でない納税者が課税事業者として納付すべき消費税において控除されることはないと解すべきである。本件において,納税者が,実質的輸入者であるとして例外的に納税者に仕入税額控除を認めるべき理由もないから,納税者の主張は理由がないと言わざるを得ない。
  月刊「税理」平成21年7月号付録・租税判例の回顧平成20年上半期 
  
(7)消費税法32条【仕入れに係る対価の返還】
  平成17年7月15日裁決(国税裁決事例集No.70 平成17年分・第2)
 本件仕入歩引又は本件売上歩引は、請求人と仕入先又は売上先との間において、手形ではなく現金で早期代金決済を行うことに対する奨励的な意味合いのもとに、買掛金又は売掛金の一部を減額するという決済条件の一つになっているものであり、 その実質が値引き又は割戻しと同様であることから、消費税法第32条第1項に規定する「仕入れに係る対価の返還等」及び同法第38条第1項に規定する「売上げに係る対価の返還等」に該当すると認められる。

(8)消費税法39条【貸倒れに係る消費税額の控除】
ア 平成6年9月30日裁決(国税裁決事例集No.48 平成6年分第2)
 消費税につき無申告の請求人が、現処分調査において、貸倒れの事実が生じたことを調査担当職員に説明せず、これを証する書類を提示しなかったことをもって、同控除の適用は認められない。

イ 大阪地裁(平8.8.28判決)平7年(行ウ)29号
 代物弁済をした連帯保証人(法人)が取得した求償債権は、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する債権に当たらないから、消費税法39条1項の規定による税額控除は認められない。
  月刊「税理」平成9年12月号付録・租税判例の回顧 

ウ 大阪地裁平成25年6月18日判決(平23(行ウ)13号)
 消費税法13条は,法律上資産の譲渡等を行ったとみられる者が単なる名義人であって, その資産の譲渡等に係る対価を享受せず,その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には,当該資産の譲渡等は,当該対価を享受する者が行ったものとして,同法を適用する旨を定めているが,かかる資産の譲渡等を行った者の実質判定は,その法的実質によるべきものと解される。
 原告は商法上の問屋として認められ,原告と買受人との間の売買契約に係る経済的利益は原告ではなく出荷者に帰属するものであつて,牛枝肉の譲渡に係る対価を享受するのは原告ではなく出荷者であるとしても,本件牛枝肉の取引においては原告が売買代金回収のリスクを負い,出荷者は同リスクを負わないこと,原告と買受人との間の牛枝肉の売買代金の合意についても,出荷者は特段の関与をしていないこと,買受人に対する瑕疵担保責任を負うのも原告であって出荷者でないことに照らせば,本件牛枝肉の取引において, 原告が,その法的実質として,単なる名義人として課税資産(牛枝肉)の譲渡を行ったものにすぎないということはできない。
 したがって,原告は課税資産の譲渡を行ったものとして,本件牛枝肉に係る債権について,消費税法39条1項の貸倒れに係る消費税額の控除の適用を受ける。
   月刊「税理」平成26年7月号付録・租税判例の回顧平成25年上半期 

エ 東京地裁平成27年4月24日判決(平24(行ウ)847号)
 子会社Aに対する売掛債権の放棄は、貸倒に該当しないため消費税法39条の貸倒れに係る消費税額として控除できない。
  東京高裁平成27年11月26日判決(平27(行コ)197号)
    月刊「税理」平成29年1月号付録・租税判例の回顧平成27年下半期 

(9)個人の居住の用・事業用の区分
  平成7年度決算検査報告 会計検査院平8.12.11
 建物のうちに自己の居住の用に供していて事業用とはならない部分がありながら、建物全体の取得に係る消費税額が控除されていた 
 

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