仕入税額控除における対価性の判定

(1)消費税法6条、別表 第1(非課税)
ア 平8年6月6日裁決(国税裁決事例集No.51 平成8年分第1)
 事業者が販売したことによる自己の商品代金債権を信販会社に譲渡等することに伴い支払う手数料は、消費税法上の非課税取引に該当する。

札幌高裁(平2.4.18判決)昭和63(行コ)8号
所得税の更正処分取消事件
 株式形態のゴルフ会員権を消費税法の非課税有価証券(別表第一第2号)から除外したことは、不利益課税が発生し不合理であるとする原告の主張を示す資料がないため主張は採用できない。
 
イ 東京地裁(平11.1.29判決)平9年(行ウ)175号
 カ-ド会社に対して支払う手数料の法的な性質は、具体的に発生した商品代金の決済手段のための債権の譲渡又は立替払に止まるものというべきであり、本件手数料に対して消費税が課されることはないから、消費税法30条1項に規定する仕入税額控除の対象とはされない。
 立替払いも債権譲渡と同様の経済的効果を有するから、これを非課税取引とする消費税法取扱通達6-3-1は、法の解釈として是認できる。
 カ-ド会社に支払う手数料は、金銭債権の買取り又は立替払いによる差益であるから、非課税取引に該当する。
→控訴 税理 1999年8月号、週刊税務通信 平12.3.6、
 月刊「税理」 2000年7号付録・租税判例の回顧

ウ 平成13年4月9日裁決(国税裁決事例集No.61)
 予備校の学則の定める教育課程にない講習会で、広く一般に募集して実施した講習会の授業料は非課税でないとした

エ 大阪地裁平成24年9月26日判決(平23(行ウ)237号)控訴
 本件各管理費の原告の負担額は,本件各ビルの共用部分の使用収益の態様や管理業務による利益の享受と直接関係なく, 団体内部において定めた負担割合に従い定まるものである。そして,原告は,本件各管理組合に対して共用部分の管理を現実に委託したか否かに関係なく,また本件管理組合が行った具体的な管理行為の内容如何にかかわらず,本件各管理費の支払羲務を負うものであり,本件各管理組合の行為と引換えに本件各管理費を支払っているものでもない。
 そうすると,原告は,本件各管理組合に対して本件各ビルの管理業務を委託したことを根拠に本件各管理費を支払っているのではなく,本件各管理組合の構成員の義務として,本件各管理費を支払っているものというべきである。
 したがって,本件各管理費は,管理組合が行う管理業務と対応関係にある金員とはいえず,役務の提供に対する対価とは認められない。

 原告及び本件各賃借人は,管理者に対し,本件各賃借人が直接管理費を支払う旨の合意書を差し入れているけれども,本件各管理規約上は原告が管理費の支払義務を負うことには変わりはなく,上記合意は,管理費部分について,本件各賃借人から原告への支払及び原告から本件各管理組合への支払を省略して本件各賃借人から本件管理組合に直接支払うものにすぎないというべきである。
 そうすると,上記合意に基づき本件各賃借人が管理組合に対して管理費を支払っていることは,原告が負担すべき管理費を,賃貸借契約に基づき賃料に上乗せして本件各賃借人の自担としていることに何ら変わりはないから,本件各賃借人が管理費を直接支払うことにより,原告は,管理費の支払羲務を免れるという利益を得ているのであって,本件各賃貸物件管理費は,貸付けの対価に該当するものというべきである。
  月刊「税理」平成25年12月号付録・租税判例の回顧平成24年下半期 

 大阪高裁平成25年4月11日判決(平24(行コ)155)(確定)
  納税者の控訴請求棄却
  月刊「税理」平成26年7月号付録・租税判例の回顧平成25年上半期 

(2)消費税法2条1項十二号
ア 平成6年11月2日裁決(国税裁決事例集No.48平成6年分 第2)
 海砂を採取する権利の取得に際し、利害関係のある漁業協同組合の同意を得るために支払った漁場迷惑料は、仕入税額控除の対象となる課税仕入れの対価とはならない。
 
イ 平成11年11月4日裁決(国税裁決事例集No.58 平成12年分上期)
 出向契約に基づいて支払った業務分担金は、法2条1項12号のかっこ書に規定する「給与等を対価とする役務の適用によるもの」に該当するから、仕入税額控除の対象にはならいない。

ウ 平成12年2月29日裁決(国税裁決事例集No.59)
 マッサージ師に支払った外注費は、所得税法第28条に規定する給与等に該当するので、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入には該当しないとされた。

エ 平成15年6月13日裁決(国税裁決事例集No.65 平成15年分)
 横断地下道の便益は、請求人のように負担金を支払った者のみが支払っていない者に比して有利な条件で利用できるものとなっていないので、課税仕入れに該当しない。

オ 東京地裁令和3年2月26判決(令和2年(行ウ)86)(控訴)
 原告の作業員2名に支払った報酬を課税仕入れとして仕入れ税額控除に計上して消費税等を申告したところ、処分行政庁から当該報酬は作業員にとって給与所得であるから課税仕入れに当たらない旨の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。
 役務の提供の対価として支出された金員が所得税法上の「給与等」に該当するか否かは、所得税法の趣旨、目的に照らし、当該対価の性質から実質的に判断すべきものであり、当事者の主観的意図に拘束されるものではない。
 本件支出金は、原告から空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的にされる労務又は役務の提供の対価として支給されたものであり、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付というべきであるから、所得税法28条1項の「給与等」に該当し、消費税法2条1項12号にいう「課税仕入れ」に当たらず、仕入税額控除の対象とならない。
 月刊「税理」令和4年8月号付録・租税判例の回顧令和3年上半期 

 東京高裁 令和3年8月24日判決 (令和3年(行コ)73号)上告
  納税者らの請求を棄却した原審の判断を維持し、納税者らの控訴を棄却
  月刊「税理」令和5年1月号付録・租税判例の回顧令和3年下半期 

PAGE TOP
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。