資産の譲渡等を行った者の実質判定 法13条

(1)広島地裁 (平18.6.28判決)平16年(行ウ)29号
  消費税法基本通達4-1-3は、単なる名義人と法律上の真の資産の譲渡等を行った者とがいるとみられる場合には、形式的には委託という法形式を用いているときであっても、同通達記載の事情等を総合的に考慮することにより真の(私法上の)法律関係を明らかにし、真の(私法上の)法律関係に従って資産の譲渡等を行った者を判定すべきことを規定したものと解される。利用客からB町が受け取った入浴料などの利用料金等はいったんは原告に振り込まれるが、賃料や電気代、水道代等のいわゆるランニングコストを除いた金額がB町に再度振り込まれるのであるから、原告は一定の賃料(月60万円)と原告が負担すべき電気代等(これらにランニングコストを加えたものを以下「ランニングコスト等」という。)を得ることになるにすぎない。そして、それらも結局は別途直ちに支出されることになるのであるからB町から振り込まれた利用料金等による利益は原告の手元には残らないようになっているのであって、反面利用料金等の利益の大半をB町が最終的に受け取ることになることは明らかである。
したがって、本件各施設における事業により挙げられた収入については、経済的にはB町に帰属するというほかない。本件各施設における事業は、B町が独自の経営判断と計算において行っていたものと認めるのが相当である。
 従って、本件委託契約を契約の内容や本件事業運営の実態、経済的な財産の帰属等を総合して判断すると、私法上真に資産の譲渡等を行ったのはB町であることは明らかであるから、利用料金等はB町に帰属するものといわなければならない。

(2)東京高裁平成20年4月24日判決(平19 (行コ)426号)(確定)
   原審:新潟地裁平成19年11月29日判決(平18(行ウ)13号)
 認定事実によれば,ロシア人船員が納税若から購入した中古車の輸出通関手続及び組合の確認手続には納税者が関与していることが認められるが,当該中古車の引渡しそのものは,納税者とロシア人船員との間の売買契約の成立, これに伴う代金
の支払及び当該中古車へのロシア人のサインにより完了しており,そうで あるからこそ, ロシア人船員が申告書に申告者として輸出託送品に係る通関手続きを受けたものというべきであり、納税者の主張はその前提を欠く。
 租税判例の回顧平成20年上半期 平成21年7月号附録
 
(3)名古屋高裁金沢支部平成20年6月16日判決(平19 (行コ)17号)
 (上告受理申立て)
  1審:福井地裁平成19年9月12日判決
 破産財団は,破産法人の基準期間における課税売上高を引き継がない別の法的主体と解することはできず,破産法人が「事業者」として消費税の納税義務を負うと解するのが相当である。
 消費税法39条2項か規定する同条1項に規定する債権につき同項に規定する事実が生じたことを証する書類の「保存」とは,税務職員の質問検査権に基づく適法な提示要請があれば提示できる態勢で保存することを要するというべきである。
 納税者(破産管財人)は,消費税法39条2項が規定する同条1項に規定する債権につき同項に規定する事実が生じたことを証する書類を整理し,これらを税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように所定の期間及び場所において態勢を整えて保存していなかったものというべきであるから,破産者Aの破産者Bに対する売掛債権(税込譲渡額)について,消費税法39条1項の規定(貸倒金の税額控除)は適用されないものというベきである。
  租税判例の回顧平成20年上半期 月刊税理平成21年7月号附録

最高裁 平成22年3月30日判決(平20(行ヒ)303号)
   上告受理申立てを不受理(確定)
   租税判例の回顧平成22年上半期 月刊税理平成23年7月号附録

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