立て替え払いの適格請求書の名宛て人について

週間税務通信No.3706号(2022.06.06)に、立て替え払いをしたときの適格請求書の対処方法の解説が図説付きで掲載されています。

1.解説の趣旨
電力会社がビル管理業者あてにビル入居者分全体の電気利用料金を一括請求した場合は、交付する適格請求書の名宛て人はビル管理業者であって実際に料金を負担し課税仕入れを行う各入居テナントではありません。
ビル管理業者は、入居者のために一括で立替払いをしたに過ぎず、その後、各テナントから料金を個別回収します。

適格請求書の法的記載6項目(改正消費税法57条ノ4第1項1号~6号)あり、第6号には「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」と規定されています。電力会社が交付する適格請求書には電力利用契約当事者である各テナントが名宛て人として記載される必要あります。

本件のような立替金事例では、ビル管理業者が一括立替払いをする関係で電力会社が交付する適格請求書にはビル管理会社が名宛て人として記載されています。
第6号の法定要件を充足するためには、ビル管理業者と各入居テナントとの間の清算書類で第6号要件を補充すれば良いとの解説です。
この解説は、インボイス通達4-2,及び、インボイスQ&A問78に沿った説明です。

2.立替金の前提条件
電力利用契約が各テナントと電力会社の間で締結された上で、利用料金の支払いだけが立替金の形で行われますが、利用契約はあくまでも当事者間で有効に成立していることが前提です。

3.週間税務通信の図説の問題
週間税務通信の図説には、契約関係が各テナントと電力会社の間で設立している前提の図説が省略されています。
インボイスQ&A問78では矢印で両者の間に契約関係が成立していることの図説があります。赤字で注釈を入れました。

インボイス通達4-2では、「複数の事業者が一つの事務所を借り受け」る記述で家主と複数の入居者の間の契約が成立していることの前提を記述説明しています。赤字で注釈を入れました。


契約当事者は電力会社と各テナントであって、料金の支払いだけを管理業者を中間に入れて行うという誤解のないように週間税務通信の図説を補足すると図の下の赤字の矢印のようになります。


なお、電力会社とビル管理業者が利用契約を締結した上で、その利用料金を管理会社が各テナントに個別請求する場合は不動産の転貸と同じだから、それは立替ではなく新たな問題が起きるから注意が必要です。

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