消費税の輸出免税制度を利用した不正還付申告

1.新聞各紙(2022.06.07)によると次のような事件です。
輸出免税運営法人「永山(EISAN):東京都台東区」が、訪日外国人旅行者に適用される輸出免税制度を利用した不正還付申告で還付を受けていました。これに対して消費税6億円が追徴されたそうです。

2.輸出免税制度(消費税法)
訪日旅行客(非居住者)が日本で購入した土産を国外に持ち出すことは、実質的には輸出と同じであるため、販売業者には輸出免税制度の適用があります。

輸出免税制度の趣旨は次のとおりです。
消費税の転嫁は日本国内の最終消費者に求めるが、海外の消費者には転嫁を求めないので輸出免税制度が設けられました。また、日本が観光立国を目指す観点からこの制度の数次の改正が行われてきました。
消費税法第8条 (輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税)適用

(1)輸出免税対象物品
一般物品:同一人に対する1日の販売価額が5千円以上
消耗品:同一人に対する1日の販売価額が5千円~50万円以下
対象は個人消費用だから、海外での事業や販売用のための物品購入は輸出免税の対象外となります。

(2)輸出免税開始のための事前手続き
販売事業者は納税地管轄税務署に次の手続きが必要です。
「輸出物品販売場許可申請書」を提出して輸出物品販売場の許可を受ける。
「輸出物品販売場における購入記録情報の提供方法等の届出書」を提出する。

(3)物品販売の際に販売事業者がとるべき手続き
外国人旅行客からパスポートの提示を受け非居住者であることを確認。
外国人旅行客が購入する物品は国外持ち出しの輸出であることの確認。
外国人旅行客の物品購入記録簿(7年間保存)を作成し国税庁長官に提出。
消費税法施行令第18条、及び、18条ノ2適用

2.本件事件で行われた偽装行為
輸出免税運営法人「永山」は、ゲーム機などを訪日外国人旅行者に販売したように偽装して消費税の還付申告を行っていた。
「永山」は、日本国内で仕入れたゲーム機などを店頭で販売せずに、国内業者や国内インターネット販売をしていた(読売)。
税務調査において、輸出物品販売記録に訪日外国旅行客一人に10台以上のゲーム機を販売したとする不自然な取引記録から偽装事件が発覚したとのこと。

消費税の還付計算は次のようになります。
税抜き    税込み    消費税
輸出免税売上100円   100円     0円(A)
国内課税仕入100円   110円    10円(B)
----------   ----  -----
差引損益    0円   △10円  差引△10(還付)

輸出免税だから売上100円には消費税の転嫁請求を外国人旅行客にはしないので消費税はゼロ円(A)となります。一方の国内課税仕入100円については消費税10円(B)を払います。
A(ゼロ円)-B(10円)=△10が税務署への還付請求となります。

報道によると「永山」の売上高は次のとおりですから、課税仕入れも売上と同等規模でないと還付にはなりません。不正還付請求は相当規模のものとなります。
2019年3月期売上高:約220億円
2020年3月期売上高:約149億円

輸出免税制度を利用した類似の偽装還付不正申告事件が、2021年10月に名古屋国税局管内においてあったそうです。中国系貿易会社など9社による不正還付申告に対して5億の追徴だったそうです(朝日、2021.10.29)。

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