電子取引情報のデータ改ざん防止への対応

1.真実性の確保の規定

 電帳法は電子取引データを保存するときに真実性確保のためにデータ改ざんを防止措置をとることを求めています。
 電帳法は所得税法・法人税法についての規定ですが、改正消費税法も電帳法施行規則第4条を準用しているので、消費税法上の電子取引情報も所得税・法人税法と同じく真実性の確保の措置が求められています。
 
受信した場合の準用規定:
 消費税法施行規則15条の5第①項による電子帳簿保存法施行規則4条①項の準用
提供した場合の準用規定:
 消費税法施行規則26条の8第①項による電子帳簿保存法施行規則4条①項の準用

 電子データの保存にあたっては、真実性確保のために電帳法施行規則4条第①項各号に掲げる「いずれかの措置」をとる必要があります。
 1号 タイムスタンプを付した後に電磁的取引情報の授受
 2号 電磁的記録情報の授受後に速やかにタイムスタンプを付す
 3号 電算システムを使用して取引情報の電磁的記録保存
 4号 電磁的記録の訂正・削除防止に関する事務処理規定の定め

 現実問題として、電帳法の認定タイムスタンプ(総務省管轄)の利用は民間のサービスですから、日々の取引データ量が多い場合は従量制で費用負担はかなりのものになることでしょう。
 法令が求めるのは「いずれかの措置」ですから、一番安価で簡単な現実的選択は第4号の事務処理規定の定めということになります。
 
 事務処理規定の定めについては、国税庁サイトで法人用と個人用の電子取引に関するもののサンプルが公表されています。
 個人用は簡単なものですが、法人用は組織を前提にしているので複雑になっています。実質は同じものだと思います。

電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(個人用)
電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人用)

2.検索機能

 上記のいずれかの措置を取った保存を行った上で、更に、電帳規則2条⑥項6号が規定する電子取引情報の検索機能を確保することが必要です。
 この検索機能の確保については、税務調査の求めに応じて電磁的記録の提示・提出をすれば不要となるので、検索機能の確保と提示・提出は代替関係にあると言えます。

3.会計ソフトによる改ざん防止機能の利用
 市販の会計ソフトの中には諸々改ざん防止機能を備えたものもありますが、そのような機能を備えたソフトウエアを使えば電帳法が求める「真実性の確保」が担保されているのかと言えば、そうはならないので注意が必要です。
 会計ソフトのベンダーもそこが心配で、ソフト利用者が事務処理規定を設けた上で会計ソフトの改ざん防止機能を使うことを求めています。

 事務処理規定を前提にするのであれば、わざわざ会計ソフトの改ざん防止機能を利用するまでもありません。 
 
4.提示・提供するデータの問題(構造化・データ変換)
 求めに応じて提供するデータが構造化されていないJPEGのような画像データの場合は、ファイル内部の数値や文字データが検索できません。
 保存するデータが構造化されたデータなのか否か、データ構造にも注意を払っておく必要があります。

 受信したデータを受信側のソフトウエアで読み込むために変換や加工する場合があります。変換や加工を一定のプロトコルに従って行う場合は問題がないのですが、これを手作業で任意に行っていると改ざんと受け止められる恐れがあるので注意が必要です。
 受信したデータを途中でデータ変換した場合でも、一定のプロトコルに従いソフトウエアで自動的に変換された結果であることが証明できれば、データの同一性については問題がない(改ざんがない)との解釈が示されています。
 なお、プロトコルの保存も必要とのことです。
 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】 問36(2022.6改定版)参照
 
 以上を総括すると、中小零細企業の場合は日常的には事務処理規程で運用して、調査のときには構造化された電磁的記録を提示・提出すれば、「真実性の確保」のために特別なことをしなくても対応できそうです。

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