適格請求書(インボイス)記載の取引年月日と費用認識の関係

 適格請求書(インボイス)に記載されている取引年月日と、買い主が仕入れ認識の取引年月日とはズレがあるので、そのズレについてどのように考えば良いのかという問題があります。

1.売り主側は法定6項目を記載した適格請求書(インボイス)を買い主に交付します。(改正法57条ノ4第①項)
第1号:適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
第2号:課税資産の譲渡年月日
第3号:課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
第4号:課税資産の譲渡等に係る税抜価額
第5号:消費税額等
第6号:書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
 
 第2号の課税資産の譲渡年月日は、適格請求書を交付する売り主側の収益認識基準にもとづいた譲渡年月日になります。
 法人税法基本通達:売上側の収益認識  2-1-2

2.仕入れ側の費用認識基準
 仕入側は自己が採用している費用の認識基準に基づいて費用処理し、仕入税額控除対象とします。
費用の認識基準は各種あり、棚卸資産の仕入では、検収日、倉入れ日など、各事業者において採用している基準が異なります。
  法人税法基本通達 仕入れ側の費用認識 5-1-1
  
 仕入側が一貫して継続採用している仕入れの認識基準による確定決算は容認されるので、売り主から交付を受ける適格請求書記載の取引年月日とはズレが出ます。
 
3.月まとめ一括請求の場合の取引年月日のズレ
 第2号の条文の課税資産の譲渡年月日は一定期間分をまとめて記載することを法文上予定しています。

第2号
 課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
 
 適格請求書を月まとめで一括請求する場合は、売り主が採用する締め日単位で〇〇月分を纏めています。仕入側は売り主側の収益認識基準に従う必要はありません。
 遠隔地取引では適格請求書記載の取引年月日では次のようなズレが出る筈です。
 売主側が倉出し収益認識基準で締めた上で○○月分を纏めて適格請求書(A)を作成します。
  売掛金 100 / 売上 100
  
 商品を購入する仕入れ側は倉入れ検収基準で費用認識をすれば、適格請求書(A)の中から仕入側の締め日未達分が10ある場合は実際に倉入れ検収した90を費用計上します。売主から交付を受けた適格請求書100とはズレがでます。
  仕入 90 / 買掛金 90
  
 仕入側は適格請求書に記載された100のうち、仕入処理した90を費用認識し、仕入税額控除対象とします。このズレは費用収益の認識基準との関係でいつでも起こりうることで、問題がありません。
 改正消費税法が適格請求書を導入した立法趣旨は、同一課税取引についての売り主と買い主の情報の共有化であって、売り主側の収益認識基準に基いて交付された適格請求書の取引年月日を買い主側に強制適用させることは法令で規定していません。 

参考:インボイスQ&A
 問87(適格請求書等保存方式における帳簿に記載が必要な事項)
 問54(一定期間の取引をまとめた請求書の交付)

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