カード会社が発行するクレジット請求明細書と仕入税額控除の関係

1.カード会社からの請求明細書は仕入税額控除の要件を満たすのか?

 商品購入の際に代金の支払いをクレジット払いにした場合は、クレジットカード会社発行の利用・請求明細書などを受け取りますが、このクレジット利用・請求書明細が適格請求書の代用になるのか、ならないのかという問題があります。

2.国税庁の「質疑応答事例」 
 この問題については、国税庁の「質疑応答事例」サイトで否定的な解釈が示されています。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/18/05.htm

質疑応答の回答の論理構成
①クレジット会社がカード利用者(仕入側)に交付するクレジット請求明細書は課税資産の譲渡に係る請求書(消費税法30条⑦項)には該当しない。
②消費税法30条⑦項に該当しないクレジット請求明細書では仕入税額控除(消費税法30条第⑨項)の要件を満たさない。

 この「質疑応答事例」で示されている解釈は現行消費税法に基づく解釈です。
改正消費税法(2023.10.01施行)では、課税資産の仕入をしたときに交付を受ける請求書は適格請求書に限られるので仕入税額控除の法定要件は更に厳しくなります。
 カード会社は課税資産の譲渡者ではなく、単なる金銭債権の請求人です。課税資産の譲渡者でないカード会社は適格請求書の交付ができないからです。

3.クレジットカードを利用した場合の取引形態 
 クレジットカード利用の場合の資金の流れは債権譲渡方式と立替払い方式がありますが、いずれの方法でもカード会社は課税資産の譲渡とは無関係です。

売り主(甲)→→(①商品Aの売買)→→→→→買い主(乙)②
  ↓     売掛金B100       カード利用者
  ↓                      ↑ 
  ↓                      ↑
(甲は売掛金Bを)③                ↑
(丙に譲渡し早期の)            クレジット
(資金回収を図る)             請求明細書
  ↓                       ↑
  ↓                       ↑
  ↓                       ↑
クレジット →→→(売掛金B100の請求)④→→┘
カード会社(丙)

①甲が乙に商品Aの譲渡をする。
 譲渡代金は100(課税資産の譲渡に該当)
 改正消費税法の下では甲は乙の求めに応じて適格請求書
 の交付義務がある。

②乙が商品Aの代金の支払いにカード決済を利用する。

③甲は、売掛金B100を丙に95で譲渡する。
  
④丙は売掛金Bの承継人として100を乙に請求する。
 丙は95で仕入れた売掛債権100の回収で差益5を得る
 ③~④の一連の取引は金銭債権の買取・立替払いに係る
 非課税取引(消費税法基本通達6-3-1)に該当する

⑤乙はクレジット100を支払う時にカード会社発行の
 クレジット利用・請求明細書を受け取る。
 この明細書は甲が交付する商品Aの請求書(適格請求書)
 ではないため、乙はこの明細書だけでは仕入税額控除が不可

 カード会社(丙)は課税資産の譲渡Aとは一切無関係で、単に金銭債権の権利行使だから、カード会社(丙)は課税資産の譲渡Aの適格請求書の交付はできない。 買い主(乙)は、売り主(甲)から交付を受けた適格請求書に基づき仕入税額控除をすることになる。
 このことはWEB上(電子取引)でクレジット払いを利用する場合も同様で、売り主(甲)から適格請求書の交付を受けておき、且つ、電帳法の関係で電磁的記録保存の必要もあります。

4.改正消費税法施行後のクレジットカード利用明細
 改正消費税法におけるクレジット利用明細の緒問題は、現在公表されている「適格請求書等保存に方式に関するQ&A」や「お問い合わせの多いご質問」にも見当たりませんが、その理由は不明です。
 現行法の下での「質疑応答事例」の回答の延長線上で適格請求書を解釈すると上記のような解釈になるのだろうと思います。 

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