改正電帳法通達7-12

1.電帳法改正通達7-12の背景(副業収入への影響)

 令和4年度税制改正で所得税法第232条第2項が創設されました。
所得税法第232条は事業所得等を生ずる者の帳簿備付の義務規定ですが、令和4年度改正において新たに第2項を設けられました。
 第2項で、雑所得を生ずる者(前々年の雑所得に係る収入が300万を超える者)についても帳簿書類の備付義務を課する新たな義務規定を設けました。
 これまで雑所得については収入・費用に係る帳簿の保存義務はありませんでしたが、令和4年度改正で、税務調査時に簿外経費を主張するような悪質な納税者への対応で帳簿保存義務が導入されました。(政府税調・納税環境整備に関する専門家会合の報告を受けて)
 
 改正所得税法第232条第2項の雑所得に係る帳簿保存義務を受けて、当該雑所得が電子取引により生ずるものであれば、その帳簿保存は電帳法7条により電磁的記録の保存となります。
 雑所得に係る電帳法の適用に係る電帳法通達7-12が新設され、令和4年(2022年)6月24日付けで公表されました。
 改正条文232条2項と電帳法の改正通達の原文は下記3参考をご参照ください。

2.雑所得の事業性の判定

 雑所得の事業性については線引き判断の難しいところがあります。
この判定について、国税庁が2022年8月1日付けで、「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募手続(パブリックコメント)を実施しました。


 近いうちにパブリックコメントを経た正式な改正通達35-2が出るものと予想します。

 改正所得税法基本通達(案)35-2の(注)において事業所得と雑所得の判定基準が示されています。
 
(注)の判定基準は2段階構成です。
 第一義的判定
  社会通念上事業と称するに至る程度で行っているか否か、
  この「社会通念上」の判定基準は不動産所得が事業的規模か否かの判定基準と同じもので、争訟事案でもよく争われる基準です。
  
 第二義的判定
  主たる所得でなく、且つ、雑所得に係る収入が300万を超えない場合は、反証がない限り雑所得と扱う。 
  サラリーマン(給与所得者)などの副業収入に網をかけたものでしょう。

 国税庁のタックスアンサー(よくある税の質問)No.1500雑所得
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm
においては、「業務に係るものとは、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものをいいます。」と説明されています。

 サラリーマンの副業の雑所得が300万以下で、取引が電子取引であれば、上記1の改正所得税法232条第2項により保存する帳簿は、電帳法7条、同施行規則4条①項による電磁的記録保存が強制適用となりますから、副業には注意を要します。

3.参考:
改正所得税法232条(事業所得等を有する者の帳簿書類の備付け等)
 第2項 その年において雑所得を生ずべき業務を行う居住者又は第164条第1項各号に定める国内源泉所得に係る雑所得を生ずべき業務を行う非居住者で、その年の前々年分のこれらの雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円を超えるものは、財務省令で定めるところにより、これらの雑所得を生ずべき業務に係るその年の取引のうち総収入金額及び必要経費に関する事項を記載した書類として財務省令で定める書類を保存しなければならない。

電帳法通達7-12 (所得税法第232 条第2項に規定する書類の保存義務者が電子取引を行った場合に保存すべき電子取引の取引情報に係る電磁的記録の範囲について)
 所得税法第232条第2項の規定により一定の書類を保存しなければならない保存義務者が電子取引を行った場合には、その電子取引の取引情報のうちその書類に通常記載される事項に係る電磁的記録を法第7条の規定により保存しなければならないが、この場合において、その書類以外の書類(その保存義務者が、その年において不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行った場合において、これらの業務に関し保存しなければならないこととされる一定の書類を除く。)に通常記載される事項に係る電磁的記録については保存しないこととして差し支えないこととする。

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