アメリカ政府のデジタル通貨・資産に係るフレームワークの構築

 2022年9月16日付け大統領令でデジタル資産(通貨)の開発のための包括的フレームワーク(指針)を公表しました。
 Comprehensive Framework for Responsible Development of Digital Assets
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/09/16/fact-sheet-white-house-releases-first-ever-comprehensive-framework-for-responsible-development-of-digital-assets/
 今回の指針は2022年3月の大統領令に沿っているものの、6ヶ月経ってもデジタル通貨発行の結論は出ていません。

1.大統領令の包括的フレームワーク(指針)の構成
 大統領令は、連邦政府機関に消費者、投資家、企業、金融の安定、​​国家の安全保障、環境を保護するためのデジタル資産(通貨発行)に係る勧告をまとめた新しい報告書を公表するよう求めています。
 米国のドル紙幣発行権限は連邦準備制度FRBに基づいています。米国でデジタル通貨Central Bank Digital Currency (CBDC)を発行する場合も連邦準備制度理事会がその権限を担うことになるので、FRBが他の連邦政府機関と協調しつつ具体的な制度設計の検討を行うことになります。
 なお、現在のFRBには仮想通貨に対する規制権限がなく、仮想通貨に対する規制は各連邦政府機関の権限に基づいて重複的に行われています。

報告書では次のような問題点が記載されています。
(1)消費者、投資家、企業の保護
(2)安全で手頃な価格の金融サービスへのアクセスの促進
  即時支払のための全国的インフラの整備
(3)金融安定の促進
  stablecoinの管理監督
(4)責任あるイノベーションの推進
  適切な規制のないイノベーションは金融システムの混乱と損害をもたらしているため責任ある新しい金融技術の開発を推進する
(5)グローバルな金融リーダーシップと競争力の強化
  米国主導による国際的枠組みの創設
(6)不正な金融との戦い
  潜在的な違法性のある銀行以外の決裁サービスに対する監督を強化しデジタル資産による不正収益の洗浄を規制する
(7)米国中央銀行が発行するデジタル通貨 (CBDC) の調査検討
 
2.CBDC発行の利点
 効率的な技術革新の基盤提供
 迅速な国境を越えた取引の促進
 消費者の多様化する金融へのアクセスの容易さと公平性の確保
 デジタル資産の機密データの保護、詐欺や違法な金融取引の取り締まり

3.CBDC発行において解決すべき問題点
 仮想通貨による不正・詐欺からの消費者保護
 司法省によるデジタル資産犯罪起訴の権限付与
 経済成長の促進
 金融決済システムの改善(CBDCは既存の銀行間決算システムでは対応しきれないため新たな監督規制法の導入)
 複数プラットフォームの相互運用の提供
 金融の多様性、国家安全性

 現在は問題がおきるたびにパッチワーク的に対処をしてきたので、問題解決のため、銀行秘密法(Bank Secrecy Act)、情報漏洩防止に係る法令、無認可の送金禁止に係る法令の包括的改正を図る必要性がある。
 デジタル資産取引所や非代替トークン (NFT:NonFungible Token) プラットフォームを含むデジタル資産サービスプロバイダーに対する規制を強化し、資産犯罪が起きたときは司法省に起訴権限を付与できるよう議会に立法要請することを検討する。

4.今後の検討体制
 最終目標は、連邦紙幣と1:1に裏付け(ペッグ制)されたCDBCの発行の可能性を探り、各種暗号通貨を排除することだそうです。
 今回の大統領令に基づきFRB連邦準備制度理事会が中心となり、国家経済評議会、国家安全保障会議、科学技術政策局、および財務省が連携して一体的な検討を進めるための作業部会を設置する。
 定期的な作業部会においては進捗状況について話し合い、最新情報を共有し、CDBCおよびその他の支払いに関する最新情報を共有する。
 証券取引委員会(SEC)がデジタル資産を利用した違法行為に対する調査と執行措置を積極的に追求することを推奨する。

 

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