1.消費税法のインボイスに記載する価額は税込み又は税抜き
改正消費税法(2023.10.01施行)では、売り主から受領したインボイス(適格請求書)の保存が無い場合は仕入税額控除の適用を受けることができません。(改正法30条⑦項)
インボイスが無い場合でも、買い主側で仕入明細書を作成して売り主側の確認を受けると仕入税額控除ができる制度があります。(改正法30条⑨項3号)
売り主側から交付するインボイスは消費税法57条ノ4第①項が適用され、買い主側が作成する仕入明細書は法30条第⑨項3号が適用されます。両者の書類の作成の根拠条文が異なりますが、記載すべき法定6項目は同じです。仕入明細書は買い主の立場から作成する規定振りです。
それぞれの書類に記載すべき価額の規定振りは微妙に異なります。
次の対比表をご参照ください。
適格請求書 | 媒介請求書 | 仕入明細書 | |
作成者 | 売り主 | 媒介者(売り主に代わって) | 買い主 |
適格請求書の根拠 | 法57条ノ4第①項 | 法57条ノ4第①項 | ----- |
仕入明細書の根拠 | ---- | ---- | 法30条第⑨項3号 |
政令49条④項 | |||
項目 | |||
売り主名 | 一号 適格発行事業者氏名・登録番号 | 媒介者名、媒介者の登録番号(令70条ノ12第①項) | 二号 課税仕入れの相手方の氏名・登録番号 |
買い主名 | 六号 書類の交付を受ける事業者氏名 | 同左 | 一号 書類の作成者の氏名 |
取引年月日 | 二号 課税資産の譲渡年月日 | 同左 | 三号 課税仕入れを行つた年月日 |
商品等 | 三号 課税資産の譲渡等に係る資産内容 | 同左 | 四号 課税仕入れに係る資産又は役務の内容 |
対価の額 | 四号 課税資産の譲渡等に係る税抜価額、又は、税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率 | 同左 | 五号 税率の異なるごとに区分して合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率 |
消費税額 | 五号 消費税額等 | 同左 | 六号 消費税額等(課税仕入れに係る支払対価の額に110分の10を乗じて算出した金額 |
(1)売り主作成のインボイスは税抜価額又は税込価額で記載する
改正消費税法57条ノ4第①項にはインボイスの法定6項目が規定されています。
第4号は、インボイスに記載する価額は「税抜き価額又は税込み価額」と規定しています。
第5号は、消費税額の記載を規定しています。
媒介特例を使って作成するインボイスにも同じ規定が適用されます。
(2)買い主が作成する仕入明細書は「仕入対価の額」を記載する
改正政令49条④項第5号は、仕入明細書に「支払対価の額」を記載するよう規定しています。
同第6号では消費税額は「支払対価の額」×10/110の計算式で計算する規定があるところから、第5号の「支払対価の額」は税込みとなります。
2.仕入明細書は消費税法30条本文の「支払対価の額」と整合性が取られている
買い手が作成する仕入明細書(法30条⑨項)は、仕入税額控除を規定した法30条の大枠の中で規定されているので法30条の大枠の中で整合性が取られています。
法30条では「支払対価の額」を税込みと規定しています。
第①項本文の括弧書き
課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に110分の7・8を乗じて算出した金額をいう。以下この章において同じ。)
第⑥項本文前段
第①項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額とは、課税仕入れの対価の額(対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、当該課税仕入れに係る資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該課税仕入れに係る役務を提供する事業者に課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。) をいい、~
法30条の規定を受けて規定されている仕入明細書の政令49条④項が規定されているので、消費税額を第5号の税込みの「支払対価の額」から抜き出すような規定となっているのです。
3.インボイスQ&A問73の解説
問73では仕入明細書に記載する「支払対価の額」について次のように回答しています。
【問】
適格請求書等保存方式の下では、記載事項を満たす仕入明細書には、「税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額」と「税率ごとに区分した消費税額等」の記載が必要とのことですが、税抜きの仕入金額と消費税額等を記載することで、必要な記載事項を満たすことになりますか。【平成30年11月追加】
【答】の抜粋
ご質問の「税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額」については、税込金額となりますが、税率ごとに区分した仕入金額の税抜きの合計額及び税率ごとに区分した消費税額等を記載することで、その記載があるものとして取り扱われます。
支払明細書に記載すべき「支払対価の額」は、本来は「税込み」であるが、税抜きの対価の額と消費税額の両方が記載されていれば、税込み扱いとするそうです。