仕入明細書による仕入税額控除の適用要件(令和4年度改正)

1.令和4年度の消費税法改正で仕入明細書による仕入税額控除の対象が課税資産に限定

 令和4年度改正において、仕入れ側が作成する仕入明細書による仕入税額控除の対象が改正されました。
 仕入明細書は課税資産の譲渡に限って作成できると改正されました。

2.改正の趣旨
 改正の趣旨は、財務省の「令和4年度税制改正の概要」696頁では次のように説明されています。
 個人事業主が行う家事用資産の売却は、もともとが不課税売上であり消費税法の対象外である。
 売主である個人事業主が課税事業者で且つ適格請求書発行事業者であっても不課税資産である家事用資産の売却については、適格請求書の交付はできない。
 適格請求書の交付の交付がない家事用資産の購入については、買手は仕入れ税額控除の適用を受けることができない。
 改正前の規定では、仕入れ明細書の作成が「課税資産の譲渡」に限定されていなかったため、本来不課税取引である個人事業主の家事用資産の売却についても買い手側で仕入れ明細書を作成すれば仕入れ税額控除ができる不都合が生じていた。そこで、令和4年度改正ではその不都合を解消のために改正をした。

3.令和4年度改正後の仕入れ税額控除の適用関係を纏めれば次のようになります

4.課税資産の譲渡と個人事業に係る家事用資産の譲渡に係る法令及び通達
 令和4年度改正により、買手側で仕入れ明細書を作成する場合は課税資産の譲渡であることを売主に確認することが必要となります。
 個人事業主(インボイス発行事業者)から中古車両を購入する場合で仕入れ明細書を作成する場合は、当該車両の家事と事業の使用割合を確認した上で、事業用部分(課税資産の譲渡対応部分)についてのみ仕入れ明細書を作成して仕入れ税額控除の適用をすることになります。

 消費税法
 法2条①項
  9号 課税資産の譲渡等 資産の譲渡等のうち、第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう。

 法4条
  ⑤項 次に掲げる行為は、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす。
   1号 個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合における当該消費又は使用

 消費税基本通達
 5-1-2(対価を得て行われるの意義)
  法第2条第1項第8号《資産の譲渡等の意義》に規定する「対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」とは、資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けることをいうから、無償による資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供は、資産の譲渡等に該当しないことに留意する。(平27課消1-17により改正)

 (注) 個人事業者が棚卸資産若しくは棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、若しくは使用した場合における当該消費若しくは使用又は法人が資産をその役員に対して贈与した場合における当該贈与は、法第4条第5項《資産のみなし譲渡》の規定により、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなされることに留意する。

 5-1-8(事業に関して行う家事用資産の譲渡)
  個人事業者が行う資産の譲渡のうち、例えば、次に掲げるものは、事業のために行うものであっても、令第2条第3項《付随行為》に規定する「その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡」には含まれないのであるから留意する。
 (1) 事業用資金の取得のために行う家事用資産の譲渡
 (2) 事業用資産の仕入代金に係る債務又は事業用に借り入れた資金の代物弁済として行われる家事用資産の譲渡

 5-3-1(家事消費等の意義)
  法第4条第5項第1号《個人事業者の家事消費等》に規定する「棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合」とは、同号に規定する資産を個人事業者又は当該個人事業者と生計を一にする親族の用に消費し、又は使用した場合をいう。(平27課消1-17により改正)

 5-3-2(使用の意義)
  法第4条第5項第1号《個人事業者の家事消費等》に規定する「使用」とは、同号に規定する資産の全部又は一部を家事のためにのみ使用することをいうのであるから、例えば、事業の用に供している自動車を家事のためにも利用する場合のように、家事のためにのみ使用する部分を明確に区分できない資産に係る利用は、同号に規定する「使用」に該当しないことに留意する。(平27課消1-17により改正)

 10-1-19(家事共用資産の譲渡)
  個人事業者が、事業と家事の用途に共通して使用するものとして取得した資産を譲渡した場合には、その譲渡に係る金額を事業としての部分と家事使用に係る部分とに合理的に区分するものとする。この場合においては、当該事業としての部分に係る対価の額が資産の譲渡等の対価の額となる。

 質疑応答事例
 事業用及び家事用の両方に使用している資産を売却した場合の課税関係
 事業と家事の用途に共通して使用される資産であっても、譲渡すれば事業用の部分については課税の対象となります(按分)。

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