役務の提供地

(1)東京地裁 平成22年10月13日判決(平20(行ウ)730)確定
 前提事実及び認定事実からすれば,本件各スポンサー契約において原告が負担した役務の提供は,各年の個々のレース参戦に限定されていると評価することは到底できず,ドライハ-の管理及びマネジメント業務やドライバー等の肖像権のスポンサー企業による無償使用等にわたるものと解するべきであり,各年における16戦ないし17戦のレース参戦と上記のその余の役務提供に対し,一括して契約金が定められたものといえ,もとより,これら原告が受領する対価が,国内を提供場所とする役務の対価と国内以外の場所を提供場所とする役務の対価とに合理的に区別できるとも解されない。
 そうすると,本件各スポンサー契約により原告が提供する役務に係る事務所等の所在地が国内にあるか否かにより課税対象該当性の有無が判断されるところ,原告は,本店事務所,カート事務所及び御殿場工場を有するも,それらの他に認定した役務の提供の管理?支配を行う ことを前提とした事務所等を有してはいないから,原告が本件各スポンサー契約によって行った役務の提供に係る事務所等の所在地は日本国内であると認められる。
 よって,上記役務の提供は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に当たり,消費税の課税対象となる。
  月刊「税理」平成23年12月号付録・租税判例の回顧平成22年下半期 

(2)東京地裁 令和3年6月2日判決(平成31年(行ウ)94 控訴
 輸出物品販売場の許可を得て、海外からの訪日ツアー客向けに商品の販売を行う免税店の経営を行う原告が、国外のランドオペレーターから受けた当該役務の提供の対価として支払った販売手数料が「国内において行った課税仕入れ」(消費税法30条1項)に該当しないなどとして消費税の更生処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから、処分の取り消しを求めた。
 役務の提供場所が国内と国内以外の地域の双方で行われるもののうち、その対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区分されていない場合には、係る役務の提供は、国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供に該当すると解するのが相当であり、その役務の提供をした場所は、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地により判定するのが相当である。
 本件ランドオペレーターの提供した役務の提供の対価である本件手数料の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域に対応するものとに合理的に区分されているとはいえない。(注:役務の提供地が明らかでないものに該当)
 本件ランドオペレーターが原告に対して行った役務の提供は、施行令6条2項6号に規定する「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供」に該当するものと認められるところ、本件ランドオペレーターはいずれも国内に事務所等を有していないから、当該役務の提供は、消費税法30条1項に規定する「国内において行った課税仕入れ」に該当しないというべきである。
  月刊「税理」令和4年8月号付録・租税判例の回顧令和3年上半期 

 東京高裁令和4年5月18日判決(令和3年(行コ)179号) 確定
  本件ガイドは、飽くまで本件ランドが行う役務履行補助者として本件ランドの役務を提供するに過ぎない。
 本件ガイドが受け取る手数料と、本件ランドが受け取る手数料が合理的かつ客観的に区分されていると評価することはできない。
 原告はランドの役務提供の履行が国内において行われることから、全部が「国内において行った課税仕入れ」に当たると主張するが、原告がランドに支払う手数料の額は国内と国外のものとに合理的に区分されているものと認められない。
 原審の判断を維持し、納税者の控訴を棄却した。
  月刊「税理」令和5年7月号付録・租税判例の回顧令和4年上半期 

(3)東京地裁 令和4年4月15日判決(平成31年(行ウ)201号)控訴
 アメリカ合衆国にあるウエッブサイトA社にCD、DVD、書籍等を出品・販売する事業を営んでいた原告が、米国A社(米国アマゾン社)から受けた役務の提供に対して原告が支払った手数料に係る消費税額を本件課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から控除することはできないとして更生処分及び無申告加算税を受けた。
 
 国内及び国内以外の地域にわった行われる役務の提供が行われた場所が明らかでないものについては、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地が国内にあるかどうかにより判断する(施行令6条2項)。原告は米国A社との間で出品サービスに係る契約を締結しているので「役務の提供を行う者」は米国A社である。米国A社の事務所等が米国にあり米国で役務の提供を受けたので仕入税額控除の対象となる国内において行う課税仕入れ(消費税法30条1項)には該当しない。
 事業者は消費税法30条7項にいう当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書を保存し、税務職員による検査にあたって適時これを提示することが可能なように態勢を整えて保存しなければならないが、原告は課税期間の手数料を把握できる帳簿及び請求書等を整理し税務職員による検査に当たって適時これを提示することが可能なような態勢を整えて保存していなかった。  
 月刊「税理」令和5年7月号付録・租税判例の回顧令和4年上半期 
 ジュリスト2023年4月号 No.1582号 租税判例速報PP10~11

 参考:平成27年改正消費税法
 本判決は、平成27年法律9号による改正前の法令適用による争訟であった。
 平成27年に次の改正が行われており、本件に平成27年改正法を適用すれば、本件役務提供も原告の日本国内事務所における役務提供と解釈される可能性がある。
 ①「電気通信利用役務の提供」に係る定義規定が設けられた(現行消費税法2条1項8号の3)。
 ②当該役務の内外判定は 当該役務の提供を受ける者の主たる事務所の所在地により行うこと(現行消費税法4条3項3号)が規定された。
 消費税法基本通達5-8-3 (電気通信利用役務の提供)

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