非課税売上(消費税法6条)

(1)大阪地裁平成24年4月19日判決(平23(行ウ)141号)
 消費税法6条1項が土地の貸付けを非課税取引としている趣旨は,土地は使用や時間の経過によって摩耗ないし消耗するものではなく,土地そのものの消費を観念することができないことから,消費に負担を求める税である消費税を課する対象から除外するという点にあるものと解される。
 かかる趣旨に鑑みれば,土地の使用を伴う取引であっても,駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合には,駐車場という施設の貸付け又は車両の管理という役務の提供について消費を観念することができるから,単なる土地の貸付けと同列に論じることはできず,消費税の課税対象とすることが合理的である。消費税法施行令8条は,このような観点から,土地の貸付につき,駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合を消費税の課税対象として定めるものと解される。
 原告は,本件各土地を,更地として貸し付けていたものではなく,駐車場として各賃借人に賃貸していたものであり,原告による本件各土地の貸付けは,駐車場としての利用に伴って本件各土地を賃借人に使用させるものであったと認められ,消費税施行令8条所定の駐車場の利用に伴って土地が使用される場合に当たるから,消費税の課税対象である「資産の譲渡等」に該当する。舗装の有無や必要な備品の価格が低額であることは,課税取引に当たるとの認定を左右するものではない。
 月刊「税理」平成25年7月号付録・租税判例の回顧平成24年上半期 

(2)大阪地裁平成24年7月11日判決(平23(行ウ)114)
 土地の貸付けは,消費そのものではなく, 単なる資本の振替又は移転であると考えられることから,原則として非課税取引とするものの,「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」は,土地そのものの貸付けではなく,駐車場その他の施設の利用に消費としての性格が認められることから,課税取引としたものであると解される。
 したがって,本件貸付けが課税取引となるか否かは,本件貸付けが本件土地における施設を利用するものとして消費の性格を有するか否かによって判断すべきである。認定事実,証拠等によれば,原告は,所得税青色決算書にぉいて,本件土社に設置したアスファルト敷舗装路面,駐車区画フイン,ブロック積み及びフェンスの各設備(以下「本件設備」という。)のうちアスファル卜舗装及びフェンスについて減価償却資産として計上していることが認められ,また,A及びBとの契約(以下「本件各契約」という。)上,本件設備のうちアスファルト舗装及び車室ラインについてそれぞれ契約終了時の現状回復羲務が定められていることも併せ考えれば,本件設備が設置された本件土地の貸付けを単なる資本の振替又は移転にすぎない「土地の貸付け」であると認めることはできず,本件設備の利用による消費としての性格が認められる。
  月刊「税理」平成25年12月号付録・租税判例の回顧平成24年下半期 

  大阪高裁平成24年11月29日判決(平24(行コ)128号)
   納税者の控訴棄却 上告受理申立
  最高裁平成25年6月14日決定(平25(行ヒ)86号)
   納税者の上告受理申立て不受理
   月刊「税理」平成26年7月号付録・租税判例の回顧平成25年上半期

(3)名古屋地裁平成24年7月26日判決(平22(行ウ)53)確定
 課税仕入れの仕入税額控除の趣旨や目的,消費税法の規定等に照らすと,同法上,非課税取引とされている「土地の譲渡」は同法2条1項12号所定の課税仕入れに含まれない。本件各土地の取引は,本件各土地の売買契約であって,消費税法において課税仕入れには当たらないとされている「土地の譲渡」に該当する。
 したがって,本件各土地の取得は,課税仕入れに該当しないから,仕入税額控除の対象にはならない。
   月刊「税理」平成25年12月号付録・租税判例の回顧平成24年下半期 

(4)大阪地裁平成28年2月25日判決(平27(行ウ)198号)控訴
  土地の使用を伴う取引であっても,駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合には,駐車場という施設の貸付け又は車両の管理という役務の提供について消費を観念することができるから,消費税法6条1項所らず, 同法4条1項されることとなる。
 原告は,本件各土地を更地として貨し付けていたものではなく,駐車場としての利用に伴って本件各土地を賃借人に使用させるものであったと認められるから,消費税の課税対象である「資産の譲渡等」に該当し,原告は本件各土地の貸付けによって得た収入について消費税等の納税義務を負う。
  月刊「税理」平成29年7月号付録・租税判例の回顧平成28年上半期 

  大阪高裁平成28年7月28日判決(平28(行コ)90号)上告
 本判決は,次のとぉり付加して判示したほか,納税者の請求を棄却した原審の判断を維持し,納税者の控訴を棄却した。
 消費税法施行令8条の「駐車場」とは、屋根付きやシャッター付き、ビル式駐車場のみを指すのではない。駐車場として使えるように通路部分も含めて整地し,区画割のためにロープや白線を設置し,駐車場所を特定するために番号が記載されたコンクリートブロックや札を設置することによって,限られた面積の土地上において相当数の車両を効率的かつ整然と駐車させることができるという効果がもたらされているのであれば,そのような設備も駐車場ということができる。したがって,本件各土地の駐車場は,同条の「施設」と評価することができる。
  月刊「税理」平成30年3月号付録・租税判例の回顧平成28年下半期 

  最高裁平成29年1月19日判決(平29(行ツ)383)
  上告棄却
  月刊「税理」平成30年7月号付録・租税判例の回顧平成29年上半期 

(5)福岡地裁 令和3年3月10日判決(平成30年(行ウ)39) 控訴
 有料老人ホームにおいて特定施設入居者生活介護及び介護予防特定施設入居者生活介護等の事業を行う原告が、有料老人ホームの入居者である要介護者又は要支援者に対する食事の提供は消費税法別表第1第7号イに掲げる消費税を課さない資産の譲渡等に該当するため、原告は消費税法9条1項に定める免税事業者に該当すると主張して、決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分の取り消しを求めた。
 介護保険法41条1項本文括弧書きは、「食事の提供に要する費用、滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用」につき、居宅介護サービス費の支給対象とならない旨規定する。
 介護保険法施行規則61条は、居宅介護サービス費の支給対象とならない日常生活に要する費用につき、~ 特定施設入居者生活介護については「食事の提供に要する費用」と「滞在 (又は居住) に要する費用」のいずれも掲げていない。
 介護保険法施行規則84条は、介護予防サービス費の支給対象とならない日常生活に要する費用につき、~ 介護予防特定施設入居者生活介護については「食事の提供に要する費用」と「滞在 (又は居住) に要する費用」のいずれも掲げていない。
 介護予防特定施設入居者生活介護の位置付けに加え、介護保険法施行規則84条の規定や厚労省の回答を踏まえて検討すると、介護保険法上、介護予防特定施設入居者生活介護の対象者に対する食事の提供は、介護予防特定施設入居者生活介護として提供されるサービス又はそれに付随して提供されるサービスには該当しないというべきである。
 したがって、介護予防特定施設入居者生活介護の対象者に対する食事の提供は、介護予防特定施設入居者生活介護には含まれないというべきである。
 以上によれば、本件食事の提供が特定施設入居者生活介護等に含まれるとはいえないから、本件食事の提供は、消費税を課さない資産の譲渡等である消費税法別表第1第7号イには該当しない。したがって、本件食事の提供は、消費税等の課税対象となるというべきである。
  月刊「税理」令和4年8月号付録・租税判例の回顧令和3年上半期 

 福岡高裁令和3年12月7日判決(令和3年(行コ)16号) 上告
  有料老人ホームの入居者である要介護者又は要支援者に対する食事の提供は、特定施設入居者生活介護等に含まれないので、消費税法別表第1第7号イに掲げる消費税を課さない資産の譲渡等に該当に該当しない原審の判断を維持し、納税者の控訴を棄却した。 
  月刊「税理」令和5年1月号別冊付録・租税判例の回顧令和3年下半期 

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