課税資産の譲渡・対価性の判定

 消費税法2条1項八~九号、法4条、法28条

(1)大阪地裁(平3.8.27判決)平2(ワ)3244号
 大阪高裁(平4.3.5判決) 平3(ネ)1925号
 最高裁 (平5.7.20判決)平4(オ)1097号
 消費税法にも古物を課税対象から除く明文又は解釈上の理由は認められないから、古物に消費税が課税されることは消費税上規定されていると解される。
 消費税は、消費という事実に示された担税力に応じて課税するものであるから消費につながる小売等の機会があれば何回繰り返されようとその都度課税されるのが当然である。
 大阪地裁 シュトイエルNo.362
 大阪高裁  月刊「税理」平5年6月号付録・租税判例の回顧税資188号、568頁
 最高裁 税資198号337頁

(2)国税裁決事例集(平4.6.1裁決)NO.43 平成4年分・第1
 競争馬賞金の「課税資産の譲渡等の対価の額」(消費税法第28条第1項)は、競争馬賞金全額と解すべき。

(3)軽油引取税 取扱通達10-1-10(現基達10-1-11)
ア  国税裁決事例集(平7.3.23裁決)NO.49平成7年分・第1
軽油引取税の特別徴収義務者に該当しない一般販売店は、同税相当額を価格に上乗せして顧客から対価を受領しているとしても、当該相当額は課税資産の譲渡等の対価の額に含まれる

イ  国税裁決事例集(平9.5.28裁決)NO.53平成9年分・第1
 軽油引取税の特別徴収義務者に該当しない者が、同税相当額を価格に上乗せしても同税相当額は課税資産の譲渡等の対価の額に含まれる。
 この裁決には、現基達10-1-11についての解釈があります。

ウ  徳島地裁平7(平10.3.20判決)(行ウ)8号
高松高裁平10(平11.4.26判決)(行コ)9号 原審支持
 軽油引取税の特別徴収義務者に該当しない者が、軽油引取税額相当額を価格に上乗せして顧客から対価を受領しても、それは軽油引取税自体ではなく同税の徴収とはいえないので、販売店において軽油引取税相当額が課税資産の譲渡等の対価から除かれることはない
 徳島地裁 租税判例の回顧(平10年上半期)税理11年7月号
 高松高裁 租税判例の回顧(平11年上半期)税理12年7月号

(4)国税裁決事例集(平8.2.28裁決)NO.51平成8年分・第1
 公的機関から受領する処理料は、役務の提供を行なうことの反対給付として受けるものであるから、課税資産の譲渡等に該当する。

(5)国税裁決事例集(平8.4.18裁決)NO.51平成8年分・第1
 通常会費  取扱通達(現基本通達)5-5-3
 事業協同組合は、組合員のための共同店舗の運営・共同売出・広告宣伝を行なっているが、組合が組合員から徴収した本件賦課金は店舗の面積割合に応じて徴収したもので店舗使用の対価となり、販売促進費は共同宣伝という役務提供の対価と認められるので消費税の課税対象に該当する。

(6)熊本地裁(平9.9.10判決)平8(行ウ)5号 速報税理平10年4月1日号
 下請けが、原材料の有償支給を受け、当該原材料を組立加工して納入することは消費税法4条1項にいう「資産の譲渡等」に該当する。
 有償支給された原材料は、親会社の資産に計上されておらず、下請けの資産である。
(参考)
  原材料有償支給について、平7.6.20裁決、事例集No.49平7年分・第1に類似あり

(7)平成7年度 決算検査報告 会計検査院 平成8年12月11日
 住宅の用に貸付けていた建物の譲渡収入を課税売上に加えてなかった

(8)静岡地裁(平9.10.24判決)平7(行ウ)6号
 元請から下請への原材料支給は、売買契約に基づき経理処理がなされており、元請は、原材料支給を課税売上として処理し、支給済みで完成納付が無い部品については決算在庫に計上せず、在庫管理もしていない。
 下請は、組立加工した完成品の代金に消費税を加算し請求している。課税標準は、組立加工賃だけではなく、完成品の対価全部である。
  月刊「税理」平10年12月号付録・租税判例の回顧

 東京高裁(平10.4.21判決)平9(行コ)186号
 最高裁(平10.11.10判決)平9(行ツ)13号
 原材料の支給は、両者とも売買契約に基づく経理処理をしており、納税者に支給した原材料を課税売上として計上して消費税を納入しており、
 他方、納税者も完成品の代金に消費税を加算して元請に請求していることなどから、加工賃相当額でなく、完成品の対価全部が課税標準額に算入されるとした原審の判断を維持した。
  東京高裁 月刊「税理」平11年7月号付録・租税判例の回顧
  最高裁  月刊「税理」平11年12月号付録・租税判例の回顧原審維持 上告棄却

(9)平成9年度 決算検査報告 会計検査院 平10.12.11
 貸し付けていた建物やゴルフ会員権を譲渡しているのに、これを見過していたため、課税売上を過小のままとしていた。

(10)大分地裁(平10.12.22判決) 平8年(行ウ)3号
 発注元M社は原告に対し原材料を有償支給(消費税加算)し、原告はM社に   電子部品を製造販売(消費税加算)している。
  M社が原告に有償支給する原材料については、M社がその受払いや数量管理等をしているとは認められないことから、原告からM社に対する電子部品の納入は、消費税法4条1項の「資産の譲渡」に該当する。
  月刊「税理」平11年12月号付録・租税判例の回顧

 福岡高裁(平12.9.29判決)平11年(行コ)6号 確定
 電子部品の支給原材料について、相殺による決済により納税者及びM社が互いに対価的意義を有する出えんをしているから、本件取引におけるM社の納税社に対する支給材の支給は、有償支給であるといわざるを得ないとし、納税社のM社に対する電子製品の納入は「資産の譲渡」に当たる
  月刊「税理」2001年12号付録・租税判例の回顧(平成12年下半期)

(11)週刊税務通信 平12.6.12 No。2627
 空き容器等回収業の実態は委託ではなく売買取引と認定 取引関係者が請求人からの容器等の回収・納入を所有権の移転及び課税資産の譲渡として認識していたことの理由により、自己の計算による容器売買として認定した。

(12)福岡地裁(平11.1.26判決)平8(行ウ)10号
 福岡地裁(平11.3.25判決)平8(行ウ)17号
 造園行を営む納税者6者で構成された企業体が民法の組合に当たり、企業体と各構成員との取引が売買契約又は工事請負契約であったと認められる場合に、発注者と企業体との取引及び企業体と各構成員の取引が消費税の課税対象となる。
  月刊「税理」平11年7月号付録・租税判例の回顧

(13)平成10.7.7裁決(国税裁決事例集No.56)平成10年分・第2
 パチンコ景品交換業務は課税取引に該当する。
 パチンコ景品回収業者が、予め合意した価格で、景品交換業者から景品を買取り、買取りとして経理処理している。
 景品は、商品価値を有するものとして認識されており、売上は販売行為である。
 景品は、単なる金銭の請求権ではなく、別表第一の非課税になじまない。

(平12.2.16判決)横浜地裁 平10年(行ウ)34号
パチンコ景品交換は、業務委託手数料又は景品の譲渡が争われた。遊戯客から買取った景品を買取業者に売ることを不可欠のこととして合意していた以上交換業者の利益は売買から成立している。パチンコ景品交換業務による対価は、景品売却によってであり、委託手数料ではなく、その景品譲渡は消法6条1項の非課税に該当しない。
  月刊「税理」2001/9号付録・租税判例の回顧(平12年上半期)

(14)週刊税務通信No.2640 平12.9.18号
 パチンコのプリペイドカ-ドの販売は非課税取引に該当する。
 パチンコのプリペイドカ-ドは物品切手であるが、パチンコ点は①カ-ド会社から仕入れて発行している、②カ-ドに発行者としてのパチンコ点の表示が無い、③カ-ドの損傷に対する取替え費用は最終的にはカ-ド会社が負担していることを理由に非課税売上に該当する。

(15)平12.10.11裁決(国税裁決事例集No.60)平成12年・第2
 事業用資産であるマンションを相続税納付のため物納したことは、課税資産の譲渡に当たるとした事例

(16)平14.5.21裁決(国税裁決事例集No.63)平成14年・第1
 無認可保育所の経営に係る資産の譲渡等には消費税法6条《非課税》の適用はないとした

(17)平成16.3.29裁決(国税裁決事例集No.67)平成15年分・第1
 宗教法人が合宿研修を行うに際し参加者から徴収した宿泊費収入は、資産の譲渡等の対価に該当し、消費税の課税対象となる。

(18)平15.11.21裁決(国税裁決事例集No.66)平成15年分・第2
 適法な競売手続により落札された競落代金は、裁判所が評価した最低競売価額より相当高額になったとしても、課税資産の譲渡等の対価の額として相当である

(19)平15.09.25裁決 仙台国税不服審判所
 スポーツチームの運営主体である財団法人は、会費を納めた会員に対して試合への招待入場等の特典を付与していたが、この会費収入と特典との間の対価性関係が争点であった。
 「会費は事業者が事業として対価を得て行う役務の提供である課税資産の譲渡等の対価」であるとして請求を棄却した。
 週間税務通信 NO。2853 平成17年1月17日号

(20)名古屋地裁(平17.08.31判決)平17(行ウ)5号
 本件取引は、資産に当たることの明らかなゴルフ会員権の売買契約という形式によってなされているから、その表示行為による限り、その対価が消費税の課税標準となることは疑問の余地がないところ、本件取引は、預託金の返還を求めた別件訴訟の係属中に、被告であるA社(ゴルフ場経営会社)から提案された和解案に起因するものであり、原告が当初の800万の返還による和解案を拒絶した結果、金額を900万に増額する代償としてB社(ゴルフ会員権取引業者)との売買契約の形式を取ることとしたものである。

 名古屋高裁(平18.01.25判決)平17(行コ)53号
 本件取引は、資産に当たることの明らかなゴルフ会員権の売買契約という法形式によってなされているから、その表示行為による限り、その対価が消費税の課税標準となることは疑問の余地がない。
 納税者及びB社において、売買契約という表示行為に対応した内心的効果意思が存在しなかったと認めることはできず、したがって、本件取引が、通謀虚偽表示によって無効であると認めることはできないとして、納税者の請求を棄却

(21)札幌地裁(平17.11.24判決)平16年(行ウ)20号
 北海道が事業のために必要であるとしてAから取得したものは、土地の所有権であって、本件建物の所有権ではなく、 ~ 物件移転契約の契約書には、本件補償金が本件建物の移転料及びその他通常受ける損失の補償であることが明記されていること、「公共事業用資産の買取り等の証明書」の摘要欄には、「建物等移転補償」「動産移転料」「移転雑費」と記載されていることに照らせば、本件補償金は、本件建物の対価補償金とは認められず、Aが本件建物を移転するに要する費用を補填するために支払われた補償金(移転補償金)であることは明らかであり、
 したがって、本件補償金は、消費税法施行令2条②項に規定する「補償金」に該当せず、消費税法2条①項8号に規定する資産の譲渡の対価とは認められず、Aの本件基準期間における課税資産の譲渡等の対価は存在しないことになる。

(22)名古屋地裁(平17.03.03判決)平16(行ウ)9号
 消費税法基本通達6-13-1は、駐車場の貸付けが住宅の附属施設として一体として行われる場合であって、住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していないものに限り、全体を住宅の貸付けとして扱い、駐車場部分についても非課税とする取扱いを定めているところ、このような基準は、駐車場の貸付けが原則として課税売上に当たり、住宅の貸付けに含まれて両者の区別が不可能ないし著しく困難である場合に例外的に非課税とする消費税法の趣旨に合致する。

(23)平16.12.09裁決(国税裁決事例集No.68)平16年分・第2
 請求人は、本件工事に係る自己の実質の収入金額は、設計・監理料のみであるから、本件各基準期間の課税売上高は3,000万円以下で、本件各課税期間に係る消費税の納税義務がない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、建築工事の全体を請け負っているものと認めるのが相当であるから、請求人の本件工事に係る収入金額の全額が課税売上高となり、設計・監理料のみを課税売上高とする請求人の主張は、採用することができない。

(24)平17.04.26裁決(国税裁決事例集No.69)平17年分・第1
 1]請求人はE生命保険G支社への週2回の出社が義務付けられていること、[2]契約第2条には、営業社員の制限事項が定められていることに加え、[3]就業規則には、服務の原則等の規則が定められていることなどにおいては、請求人がE生命保険の指示、命令を受ける一面があることは否定できない。しかしながら、営業社員としての請求人は、自己の計算においてその仕事を遂行するものであり、また、役務の提供につきE生命保険の一般的な指揮命令下にあるということはできないから、請求人は自己の計算において独立して事業を営む者であると解するのが相当であり、消費税法上の事業者に当たる。営業社員としての請求人が消費税法上の事業者に該当し、同人がE生命保険から営業社員報酬として支払を受けた研修手当が、課税資産の譲渡等の対価の額になると認められる以上、研修手当とともに営業社員報酬の一部として支払を受けている通勤手当等についても、その全額が課税資産の譲渡等の対価の額に含まれると解するのが相当である。
 請求人は報酬明細及び収支報告書を提示しているとしても、これは帳簿とは認められないことから、課税期間の課税仕入れ等の税額に係る帳簿を保存していなかったものと認められる。そうすると、本件の場合、課税仕入れに係る消費税額について消費税法第30条第1項の規定の適用はない。

(25)平17.03.22裁決(国税裁決事例集No.69)平17年分・第1
 請求人が新付けにより獲得した得意先はすべて請求人の得意先となる一方、A社の売上金額の増加にも資することが認められ、また売上増加を期待するA社が支払う本件受入手数料は、新規顧客獲得数に応じて支払う出来高払いとしての報酬の性質を有するもので、新規顧客獲得という役務の提供の対価であると認めるのが相当である。また、請求人が受け取る一戸当たりの本件受取手数料は、請求人が新規顧客宅に配置する薬品の仕入原価の3倍を超えていること、本件受取手数料は課税資産である薬品の仕入れに係る取引の対価の額とは必ずしも対応しない新規顧客獲得戸数を計算基準として算出されて支払われていることからすると、本件受取手数料とA社からの薬品仕入れの対価との間に対応関係は認められない。
 そうすると、本件受入手数料は、販売奨励金等には該当せず、むしろ役務の提供の対価として課税資産の譲渡等の対価の額に当たるというべきである。

(26)東京地裁平成18年10月27日判決 平成17(行ウ)529号
 入湯税は、その性質上、消費税の課税標準である「課税資産の譲渡等の対価の額」に含まれるべきものではないのである。
請求書や領収書等に入湯税の相当額が記載されているか、事業者において預り金や立替金等の科目で経理しているかといった点のみならず、問題となる税金(入湯税)の性質や税額、周知方法、事業者における申告納税の実情等の諸般の事情を考慮し、少なくとも当事者の合理的意思解釈等により、課税資産の譲渡等に係る当事者間で授受することとした取引価額と入湯税とを区別していたものと認められるときには、消費税法基本通達10-1-11のただし書きにいう場合には当たらないものと解するのが相当である。

(27)平成19年3月29日裁決(国税裁決事例集No.73)平19年分・第1
 売買契約の買手である審査請求人が金銭を受領することなく当該売買契約に係る権利義務の一切を第三者に移転した取引について、売買契約に係る買主の権利義務を一体として移転したものであって、代金支払債務の引受けを対価として目的物引渡請求権を譲渡したものとは認められないから、対価を得て行われた資産の譲渡等に該当しない。

(28)名古屋地裁 平成20年10月30日判決(平19(行ウ)72号)控訴本件売買契約に係る買主の地位(権利義務)を移転するに当たり、その移転の対価として納税者がA社から経済的利益を受けたことを認めるに足りる証拠はなく,上記買主の地位の移転が対価を得て行われたものと認めることはできない。
 本件譲渡は独立した債権譲渡ではなく,上記買主の地位を移転する旨の合意の一要素を構成するにすぎないものであり,代金支払義務の引受けもその一要素にすぎないものであって,本件譲渡の対価ということはできない。
 そうすると,本件譲渡が消費税法上の「資産の譲渡」に該当するということはできず,これを除いた納税者の売上高が1,000万円を超えるとは認められない。
  月刊「税理」平成21年12月号付録・租税判例の回顧平成20年下半期 

 名古屋高裁 平成21年10月22日判決(平20(行コ)51号)上告受理申立て
  本件の取引は,法的には,Xの買主としての地位をA社と交代する,あるいは買主の地位を讓渡する合意をしたと評価するのが相当であり,この交代ないし譲渡に伴い金銭の授受がXとA社との間にされていないから,XからA社への「対価を得て行われる資産の譲渡があったとはいえない。
  月刊「税理」平成22年12月号付録・租税判例の回顧平成21年下半期 

 最高裁 平成22年10月12日判決(平22(行ツ)50、平22(行ヒ)51)上告棄却

(29)東京高裁 平成20年4月23日判決(平19(行コ)427号)
 控訴人と本件支払先との間の法律関係が雇用ないし請負のいずれに該当するかは, 当該事案における当該業務ないし労務及び所得等の態様などの客観的な事実関係に即した法的評価に係る事柄であり,このような客観的な評価と控訴人の主観的な意図との間に認識・見解の相違が存するとしても,それによって当該法律関係の客観的な評価が左右されるものではなく,その客観的な評価に従って税務行政が遂行されることを論難する所論は当を得ておらず,本件においても,当該業務ないし労務及び所得等の態様等の客観的な事実関係を総合的に考察すれば,控訴人と本件支払先との間に真実に存在する法律関係は,客観的な評価としては,雇用契約又はこれに類する原因と認めるのが相当であり,これを請負契約と評価し得る事実関係の存在を認めるに足りないというべきである。
   月刊「税理」2009年01月号 

(30)大阪地裁 平成21年11月12日判決(平20(行ウ)161号)確定 結局のところ,X及びA社は,オール電化の採用それ自体に対して本件電化手数料が支払われるものと位置づけていたのであって,本件電化手数料は,専らマンションにオール電化を採用したことに対する謝礼又は報奨金として授受されたものと認めるのが相当であり,これに加えて,本件覚書役務の提供の対価としての性質を有しているということはできず,「資産の譲渡等の対価」には該当しない。
  月刊「税理」平成22年12月号付録・租税判例の回顧平成22年下半期 
 注:電力会社Aが事業主Xに支払った電化手数料に係る消費税額7万2千8百円から賃貸マンション建築請負代金に係る消費税額1392万4607円を控除する確定申告
 
(31)京都地裁 平成23年4月28日判決(平19(行ウ)48)平21(行ウ)5 控訴
 弁護士会法律相談センターにおける原告の事務処理によって、各弁護士は受任の機会を得ていると評価することができ、原告の当該役務提供と本件各受任事件負担金との間には明白な対価関係がある。
 弁護士法23条の2に基づく照会手数料は,照会に係る事務という役務の提供に対する反対給付であり,当該役務提供との間に明白な対価関係がある。
 本件各事務委託金は,その実質も事務委託金,すなわち,本件組合等が原告に事務を委託し,その委託された事務を原告が行うという役務の提供に対する反対給付(対価)であると認められる。
 司法修習委託金は,役務の提供に対して受ける反対給付であり,対価性があって,その役務の提供は対価を得て行われたものであるといえるから,当該役務の提供は課税対象である「国内において事業者が行った資産の譲渡等」(消費税法4条1項)に該当し,当該役務の提供は課税対象となる。

 大阪高裁平成24年3月16日判決(平23年(行コ)86号) 上告
 本来消費税は広く薄く課税対象を設定し、最終的に消費者への転嫁が予定されている税であるから,事業者が収受する経済的利益が,消費税の課税要件としての「資産当の譲渡(本件においては役務の提供)」における対価に該当するためには,事業者が行つた当該個別具体的な役務提供との間に,少なくとも対応関係がある,すなわち,当該具体的な役務提供があることを条件として,当該経済的利益が収受されるといい得ることを必要とするものの,それ以上の要件は法には要求されていないと考えられる。
   月刊「税理」平成25年7月号付録・租税判例の回顧平成24年上半期 

 最高裁平成27年2月24日判決(平成24(行ツ)202,平24(行ヒ)236 上告不受理
   月刊「税理」平成28年7月号付録・租税判例の回顧平成27年上半期 

(32)福岡地裁 平成23年7月15日判決(平21(行ウ)57) 控訴
 内航海運業の新たな船舶を建造するに当たり、日本内航海運組合連合会に納付すべき建造等納付金の免除を受けるために必要となる「留保対象トン数使用承諾書」を取得する取引は,「資産の譲渡等」(消費税法2条1項8号)に当たり,「課税資産の譲渡」(消費税法2条1項9号)に該当するから,これと裏腹の関係にある「課税仕入れ」(同項12号)に該当するというべきである。
 「預託金預り証書」は,本件組合員が内航総連に対して預託した預託金返還請求権を表象したものであり,本件預託金証書取引は,預託金返還請求権についての取引であると解されるから,「金銭債権」の譲渡として非課税取引に当たり,「課税仕入れ」(消費税法2条1項12号)には該当しないというべきである。
   月刊「税理」平成24年12月号付録・租税判例の回顧平成23年下半期 
 
 福岡高裁平成24年3月22日判決(平23(行コ)34号)確定
  国の控訴請求棄却
  月刊「税理」平成25年7月号付録・租税判例の回顧平成24年上半期 

(33)東京地裁平成25年11月27日判決(平24(行ウ)139号)
 弁護士会(原告)が設置した法律相談センターにおいて、相談者から事件の受任等をした弁護士から支払われる一定の受任負担金は、センターの規定に基づく役務提供の対価であるため本件受任負担金は消費税法28条1項本文の課税標準の基礎を成すべきものに当たる。
 弁護士法23条ノ2に基づく照会手数料は、消費税法28条1項本文の課税標準の基礎を成すべきものに当たる。
 事務委託等を受けた弁護士協同組合及び財団法人法律扶助協会(以下「本件組合等」という。) から支払われる金員(以下「本件各事務委託金」という。)は、原告の給与規則及び就業規則に本件組合等への出向に関する定めがないこと等の事情を考慮すれば,本件各事務委託金は,原告がその事務局員の職員をもって当たらせた本件組合等の事務処理に係る役務提供の対価として収受されたものと見るのが相当であり,消費税法28条1項本文の消費税の課税標準の基礎を成すべきものに当たる。
 司法修習生の実務研修の委託に基づき,その経費に充てるため司法研修所長から支払われる金員(以下「司法修習委託金」という。)は、司法研修所長の委託を受けて原告が行う役務提供と,当該委託の存在を前提に原告の会長の請求に応じてされる司法修習委託金の最高裁判所規則に定める制度及びその運用に基づく関係に照らすと,司法修習委託金は,消費税法28条1項本文の課税標準の基礎を成すべきものに当たる。
  月刊「税理」平成26年12月号付録・租税判例の回顧平成25年下半期 

 東京高裁平成26年6月25日判決(平25(行コ)442)
  控訴棄却
  本件についてみると,本件各センタ一における名簿の作成等や法律相談等の実施という業務の遂行により,弁護士会員が事件受任の機会を得たものということができるから,本件受任事件負担金は本件各センターの役務提供の「対価」というべきである。事業者が収受する金銭等が「対価」に当たるためには,それが契約又は合意に基づくものであることまでは必要ではない。また,消費税法上の「対価」が,双務契約関係に基づく債権債務としての権利性を有していることを前提とするものということもでき 
  月刊「税理」平成27年7月号付録・租税判例の回顧平成26年上半期 

(34)東京地裁平成26年2月18日判決(平25(行ウ)23号)
  会員制リゾートクラブ(B)を主宰していた破産者が,消費税及び地方消費税について,B倶楽部に入会した会員から入会時に収受した金員のうち,預託金として返還することとされている部分を除いた残りの部分(以下「本件金員」という。)は,課税資産の譲渡等の対価に該当する。
 本件金員は、宿泊ポイントの対価として収受されたものである。
  月刊「税理」平成27年7月号付録・租税判例の回顧平成26年上半期 

(35)大阪地裁令和元年12月13日判決(平成31年(行ウ)22号)控訴
 原告はICカード利用者(会員)に対する利用に応じたサービスポイントの付与し、提携契約に基づき提携法人とポイントと交換(提携ポイント)を行っていた。原告ポイントと提携先法人ポイントを交換したときに原告は提携先からポイント交換で金員を受けた。
  参考:原告は大阪の交通系ICカードPiTaPaの運営事業者であり、ICカード利用料金は後払い方式で1か月後の精算時に決済割引ポイントをが付与される仕組みである。付与されたPiTaPaポイントを他の提携交通機関(航空会社等)のポイントに交換できるが交換時に提携交通機関(航空会社等)が原告PiTaPaに10ポイントにつき1円を支払う仕組みである。この10ポイントにつき払われる1円が役務提供の対価であるか否かが争点となった。
   
 提携ポイントの交換は、提携ポイントを基に所定の割合により算出した数の本件ポイントを付与し、もって、当該数の本件ポイントについて原告の実施する本件ポイントサービスの対象に組み込むことを内容とする役務を提供する債務を負うものである。
 本件金員は、原告(PiTaPa)によって当該債務(当該役務の提供)が行われることを条件として、原告(PiTaPa)において収受されるという対応関係にある。
 したがって,本件金員は,提携法人に対し,ポイント交換がされた提携ポイントを保有していた双方会員に関し,当該提携ポイント数を基に所定の割合により算出した数の本件ポイントを付与し,もって,当該数の本件ポイントにつき原告(PiTaPa)の実施する本件ポイントサービスの対象に組み込むという役務の提供に対する反対給付として,「対価」に該当するものということができる。
  月刊「税理」令和3年1月号付録・租税判例の回顧令和元年下半期 

 大坂高裁 令和3年9月29日判決(令和2年(行コ)10号) 確定
 本件金員は消費税法2条1項8号にいう「対価」に該当せず、これを消費税の課税標準とすることはできないから、本件金員を本件各課税期間の消費税の課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額に算入することはできず、本件金員が課税資産の譲渡等の対価の額に算入されないこと等を理由としてした本件各更生の請求につき更生をすべき理由がない旨の各通知処分のうち、本件金員が課税資産の譲渡等の対価の額に算入されることを理由とする部分は、違法というべきであり、取消しを逃れない。
  月刊「税理」令和5年1月号付録・租税判例の回顧令和3年下半期 

(36)東京地裁令和4年6月7日判決(令和元年(行ウ)480号) 確定
 本件譲渡においては、建物(課税資産)と土地(非課税資産)を同一の者に対して同時に譲渡した売買について、その譲渡時点において、建物と土地の各譲渡の対価の額に区分されていなかった。
 原告は、本件代金総額に平成28年度の本件建物固定資産税評価額と本件土地固定資産税評価額との合計額のうちに本件建物固定資産税評価額の占める割合を乗じて計算した金額を、本件建物の譲渡に係る消費税の課税標準とした更生処分を受けた。

 消費税施行令45条3項を適用した場合における本件建物の譲渡に係る消費税の課税標準の額を計算する際に用いられる課税資産及び非課税資産の「価額」とは譲渡時における適正な時価、すなわち客観的な交換価値であると解される。
 消費税施行令45条3項が定める「対価の額」とは、消費税相当額を含まないものである。

 当該資産の個別事情を考慮した適正な鑑定が行われ、その結果、固定資産税評価額と異なる評価がされ、価額比においても実質的な差異が生じた場合には、もはや固定資産税評価額による価額比を用いて按分する合理性を肯定する根拠は失われ、適正な鑑定に基づく評価額による価額比を用いて按分するのがより合理的となるというべきである。
 裁判所が原告の鑑定申出を採用し、鑑定人が行った本件建物および本件土地の売買時点の時価評価額の鑑定は、鑑定人が公正かつ中立的な立場から実施したものである。
その鑑定の手法については不適切ないし不合理な点は見当たらず、本件鑑定の評価額は適正な鑑定に基づくものといえる。
 本件代金総額を、本件建物鑑定評価額にその消費税額相当を加算した金額と本件土地鑑定評価額との比率で按分することによって、本件建物の譲渡の対価の額に消費税等相当額が上乗せされた金額を算定した上で、消費税等の税率で割り戻して当該金額から消費税相当額を控除することによって、本件建物の譲渡に係る消費税の課税標準を算定するのが相当である。
 裁判所が認定した本件課税期間の消費税等に係る税額、納付すべき合計額及び過少申告加算税の額を超える部分に限り、本件更生処分等は違法であるから、取り消されるべきである。
  月刊「税理」令和5年7月号付録・租税判例の回顧令和4年上半期 

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